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金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

火星の人

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火星の人
 

  • アンディ・ウィアー 著/小野田和子 訳
  • ハヤカワ文庫 刊
  • 10.7×15.7cm、580ページ
  • 2014年8月
  • ISBN 978-4-15-011971-3

書名からして本書の設定を良く表している。火星人ではなく火星と人の間に「の」が入っていること。つまり本書は純然たるSFではなく近未来の人類の話なのだ。書店の棚はSF小説コーナーだったため、半年近く目に止まらなかったこと、どうもすみません。

設定は、人類3度目の火星有人探査。主人公であるアメリカの植物学士がアキダリア平原(マーズ・パスファインダーが着陸したクリュセ平原の北にある)に着陸して植物栽培に取り組もうとした矢先、時速175kmという強風に見舞われ、帰還を果たすまでの冒険物語となっている。

だが本書は危機に直面した人間のみを視点に据えた小説ではない。今回同時掲載された「なぜ生物時計は、あなたの生き方まで操っているのか?」と一緒にお読みになることをオススメする。理由は最初に記したように、本書がテラ・フォーミングをテーマにした科学書で、実際のデータをきっちり踏まえたものだからだ。

読者のみなさんは、火星の1日が何時間か知っていますか?筆者は24時間37分26.4秒と記憶していた。だが、著者は冒頭に24時間39分35秒(1ソル:火星の1日)と記した。この違いは何を意味するのか?天文学的に言えば、対恒星自転周期と対太陽自転周期の違いだ。これをもって筆者は本書を本物と断定した。理科人間の筆者は、それからはスラスラ!つまり本書に深くのめり込んだのである。あとはお読みください。