- 創元社 刊
- 17 x 14.4cm、65ページ
- 2009年4月
- ISBN 978-4-422-21471-9
- 価格 1,260円
本書(原書名The Mayan and Other Ancient Calendars)は、以前ご紹介した「ストーンヘンジ」の姉妹書。57ページのこの本よりやや厚いのは、用語解説と暦に関する注があるからだ。著者紹介によれば、著者はマヤ暦の研究家。姉妹書同様豊富な図版が特徴で、マヤ固有の絵文字の解読(評者は良くできないが)に大変便利である。また、マヤ独特の暦は日・月ばかりでなく、金・火・木・土の運動に基づく長期暦(驚くなかれ3000年や9000万年4億年といった人類がいなかった頃まで)が記述されている。
みなさんもどこかで聞いたかも知れないあの2012年のこと。映画などで知った人も多いだろう。あるいは、コンビニでも購入できるトンデモ本でも読まれたかも知れない。そのトンデモ本によれば、ノアの洪水もキリストの誕生も黒死病(ペスト)の流行も、また1万数千年前にあったそうな核戦争も、マヤの人々は全て予言したそうだ。その根拠がマヤの暦で、それに基づく2012年12月21日に古い時代が終り、同時に新しい時代が開始すると言う。トンデモ本はこの日を世の終末と論じている。挙句の果てには、地球軌道に最接近する日付も距離もほとんど根拠なく、かつて何度も騒動になったあの小惑星トータティスの地球衝突がまたぞろ復活している。
もちろん本書は、評者が取り上げ推薦するものとして、科学的に立派な本である。原書名には和書名に見られる予言も占星術もなく、純粋に暦学の書である。評者は2012年の終末予定日を否定したアメリカの天文誌「Sky and Telescope」を読んでから、マヤ文明については一介の学者になった(つもりだ)。お陰で議論を沸騰させた関連本まで古書店で衝動買いして読んでしまった。
しかも、本書最終ページによると、冬至点と銀河中心の接近(直線状に並ぶのはまだ200年先)がアメリカでは重視されているという。どうです、みなさんもこの年に本書でマヤの暦学を学んでみませんか。