- 原書房
- 19.7×13.8cm、320ページ
- ISBN 978-4562057009
- 価格 2640円
この半世紀毎月読んでいるアメリカの天文誌Sky & Telescopeを求めて丸の内のM書店に行った際、宇宙科学書コーナーで見つけた本書。1回目は上巻だけにしておこうと思い、帰宅のために電車に乗った途端、失敗したと思った。下巻も読むべきだと思ったのだ。それほどに本書はこれまでにない衝撃的内容の本なのだ。上巻1ページ目の巻頭言「なぜ天体物理学者に仕事があるのか、不思議に思ったことのあるすべての人に」である。次々ページにあるリンカーンの言葉「敵と友人になれば、敵を滅ぼしたことになるのではないか?」と言うのも実に意味深だ。オモシロイの一言。
天測航法から始まって、占星術、暦学、天体物理学の発展など、一見軍事とは無関係に思えていたことが、ロケット技術などの発展によって今や宇宙から地球を見ることの飛躍的進歩がもたらされ、宇宙軍の創設など安全保障に欠くべからざる状況になっていることが、本書で明確に示されている。上巻68ページにある、紀元前1963年2月26日(日本時間では27日)に起こった金星・土星・火星・水星と0.5度範囲に収まる4惑星集合、やや離れて木星、さらに離れて月が明け方の空に並ぶトンデモナイ会合は、正しく歴史的なことだったに違いないと評者は考える。実はこれが中国暦学の始まりだった可能性があるという。352ページの厚い(熱い)本をゆっくりとご堪能ください。