- 原書房
- 19.6×13.8cm、320ページ
- ISBN 978-4562057016
- 価格 2640円
上巻は歴史時代から現代に至る天文学と軍事についての歴史が語られた内容だったが、下巻は20世紀半ばから未来に至るそれを語った本である。よって、若い皆さんに、より一層おすすめの本。著者の一人タイソン氏は、ニューヨークにある世界的に有名なヘイデン・プラネタリウムの館長で天体物理学者、もう一人のラング氏も同館の研究員なので、お付き合いはないが評者の仲間である。タイソン氏は、皆さんもお読みになったかもしれない『忙しすぎる人のための宇宙講座』や『ブラックホールで死んでみる』の著者である。
下巻は電波天文学から始まる。早速、電波望遠鏡とスパイ衛星の話。ジョドレルバンク電波天文台、そのそもそもの始まりが、レーダーを使ったナチスのV2ロケットの探知が急務だったことからであった。よって、電波天文学が軍事と深く結びついていたことは旧知の事実だった。だが、これまでに同電波天文台の歴史が詳しく紹介されたことは、日本ではほとんどなかった。やがてアメリカのベラ・ホテル(軍事)衛星が発見したのは、軍事対象のものではなく、皮肉にも宇宙で最大規模の爆発γ線バーストだった。評者が毎晩その変光を観測しているベテルギウスの、やがて来る爆発時にもそれが起こるはずだ。
スパイ衛星の話など物騒なものだけではなく、以下7〜9章は、天文学が発展することによって、覇権争いに明け暮れる地球の救世主になるということが予想されるとも書かれている。