- 東洋書林
- A5判、472ページ
- ISBN 978-4-88721-755-3
- 価格 5,040円
すでにご紹介したガウスとフンボルトの本は、小説家の目を通してのフンボルト像だったが、本書はまた違った目で記述された伝記である。わずか半年間に、これまで日本では余り耳目を集めたとはいえない大科学者の伝記が相次いだことに、評者はまずビックリ。次に、実際にフンボルトが探検した跡を忠実に追跡し、あたかも一緒に歩いたかのように描き出した探検家としての著者の捜索力にビックリ。ともかく、微に入り細に入り、フンボルトとその同行者の行動が記述されている。
末尾に付された科学百科的で膨大な資料にもビックリ。最後に訳者お二人(まさしくフンボルトの研究者)による、あとがきなどというのがもったいないほどの文章にもビックリした。西川氏の「フンボルトと日本論」には、シーボルト、榎本武揚、内村鑑三、森鴎外、小川琢治など皆さんも良くご存知の人ばかりが登場する。フンボルトとラテンアメリカ・メキシコ・ロシアとの関係を述べた前田氏のまとめも注目に値する。改めてフンボルトのすごさに身が震える思いをした。
また、フンボルトの天体観測(凄い量だそうだが)も本書に登場する。とくに評者が待ちに待っていた、1799年11月12日午前2時半から日の出後まで続いたというしし座流星群の記録も、もちろん記述されている! ぜったいにおすすめの本! 決して価格は高くありませんよ。