ESOのVLTが捉えた初期宇宙の姿
【2000年2月29日 ESO Press Releases】
ヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLT (Very Large Telescope)が赤外線で捉えた初期宇宙の姿が公開された。わずか4.5平方秒角の領域にたくさんの深宇宙銀河が写し出されている。今後、可視光やX線画像との比較により、深宇宙に存在する銀河核の活動性などとの関連が調べられる。
ヨーロッパ南天天文台は、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スウェーデン、スイスの8ケ国が参加している天文学研究組織で、現在チリ北部の標高2632メートルの山頂に口径8.2メートルの反射望遠鏡をあわせて4基建設中である。このたび3基目の建設が完了し、先日ファーストライトを迎えたのは記憶に新しい。4台の望遠鏡がすべて完成し、それがリンクされるようになると実質口径16.4メートルの巨大な望遠鏡が誕生することになる。
このうち1号機であるANTUが撮影した深宇宙の画像が公開された。口径は日本の国立天文台が所有するすばる望遠鏡とほぼ同じであることがら、画像の比較という意味でも興味がある。今回撮影されたのは「AXAF Deep Field」と呼ばれる銀河系の南極付近に位置する深宇宙の姿である。
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(左図)上記Kバンドの画像をJバンド、Rバンドの赤外線画像と3色合成して作成したカラーイメージ。画面右上に比較的赤い銀河の像がみられる。これらの銀河は宇宙誕生からまだ40億年しか経っていないにもかかわらず、比較的進化した銀河であることがわかっている。[Preview - JPEG: 400 x 451 pix - 103k] |
これまでの宇宙論では、今まで宇宙でつくられた恒星の80%以上は、宇宙が形成されてから現在に至るまでの時間の後半期、すなわち今から70〜80億年までの間に銀河の中で形成されたものであると考えられていた。しかし近年この考え方に疑問が投げかけられている。すなわち最近の観測によると、宇宙が誕生してからわずか30億年程度の間に相当な数の銀河が誕生しているらしいのである。
このくらい遠い宇宙になると、星間ダストによる光の吸収の影響によって可視光での観測は難しい。また赤方偏移によって遠い銀河からの可視光は赤外線側にシフトしてしまう。このため深宇宙領域の観測には波長の長い赤外線による観測が有効である。また微量な光を捉えるためにはなるべく長い露光での撮影が必要である。
今回の観測により、誕生してからわずか40憶年程度しか経っていない宇宙にある銀河がとらえられた。その銀河の形状はかなり進化しており、この時点で既に銀河形成が活発に行われていたようすが浮かび上がってきた。今後、X線宇宙望遠鏡チャンドラとの共同観測によりX線画像との比較が行われるという。遠方銀河核の活動性との関連が楽しみである。
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