エンデバー帰還。国際宇宙ステーションによるフレアに注目!

【2000年12月15日 アストロアーツ】

ドッキング解除後にエンデバー号から撮影されたISS
ドッキング解除後にエンデバー号から撮影されたISS (提供/NASA)

日本時間12月1日昼に国際宇宙ステーション (ISS) に向け飛び立ったスペースシャトル・エンデバー号 (STS-97/国際宇宙ステーション組立ミッション4A) は、巨大な太陽電池パドルを持つ「P6トラス」と呼ばれる構造体をISSに取り付けるなど予定の任務を完了し、日本時間12月12日朝、アメリカ・フロリダ州ケネディー宇宙センターに無事帰還した。

今回取り付けられた「P6トラス」により、ISSの発電能力は約60kW増強された。ISSのこれまでの発電能力は、「ザーリャ」および「ズベズダ」による計約10kWであったから、ISSの発電能力は一気に数倍になったことになる。これで、電力不足により使えなかった「ユニティ」が常時使えるようになり、そして来年1月にスペースシャトルで打ち上げられるアメリカの実験棟「デスティニー」の受け入れ準備も整ったことになる。

11月初めからISSに滞在している第1次滞在クルー3名 (指揮官のビル・シェパード飛行士、ソユーズ船長のユーリ・ギドゼンコ飛行士、フライトエンジニアのセルゲイ・クリカレフ飛行士) は、今後もISSでの任務を続け、生物学的実験や「デスティニー」の取り付けの補助などを行なった後、2001年2月に第2次滞在クルーと交代する。

なお、今回取り付けられた「P6トラス」は、長さが約240フィート(約73m)もあり、これはジャンボジェット機の翼幅よりも長く、宇宙での構造物としてはこれまでで最長のものである。

ところで、「P6トラス」の巨大な太陽電池パドルは太陽光を鋭く反射する。そしてその反射光が偶然に地上の観測者に直接向いていた場合、とても明るい光点として観測できる。この現象はフレアと呼ばれる。その明るさは、まだ観測例があまり無いためわからないが、角度の条件が良い場合には金星以上の鮮烈な輝きが見られるかもしれない。

ただし、イリジウム衛星によるフレアの予報を含む人工衛星の可視予報サービスを提供しているHeavens-Above (ドイツ宇宙オペレーションセンター) によると、残念ながらISSによるフレアの予報は困難ということだ。理由は、ISSの軌道は通信衛星であるイリジウム衛星ほど正確には制御されていないためなのだそうだ。ISSによる明るいフレアを見たければ、何度も繰り返しISSを見るしかないようだ。

ISSはフレアを起こさない場合でも2等級〜マイナス1等級程度と明るいため、都会の空でも手軽に観測できる人工天体である。ぜひ、可視予報サービスを活用して観測してみてほしい。


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