遠方クェーサーがもたらした2つのボーナス

【2002年2月13日 Chandra Press Room

NASAのX線観測衛星チャンドラによる遠方のクェーサーの観測により、このクェーサーの中心にあると思われる超巨大ブラックホールの情報と、クェーサーと我々の間にある銀河に含まれる酸素の情報の2つが得られた。

(クェーサーPKS 1127-145の画像)

(画像提供:NASA / CXC / A. Siemiginowska (CfA) / J. Bechtold (U.Arizona))

このクェーサーはコップ座の方向にあり、地球からの距離はおよそ100億光年である。チャンドラを用いたX線観測から、中心から100万光年以上にもわたるジェットが噴き出しているようすがわかった。これにより、10億光年以上離れたところにあるジェット構造も観測可能であるということが示されたことになる。こういったジェットを研究することで、クェーサーのモデルやその中心にあると考えられている超巨大ブラックホールのモデルの正当性を調べることができるだろう。

ジェットの長さやその途中に見られる明るいこぶの存在から、中心の超巨大ブラックホールは長期にわたって断続的に活動している(つまり、活動の激しさに波がある)と考えられる。

同じ観測によるもう一つ別の結果として、地球からおよそ40億光年離れたところにある銀河に含まれる酸素の量がわかった。この銀河はクェーサーと我々の間にあって、クェーサーからやってきたX線の一部を吸収しているのだ。X線の吸収量から推定されるこの銀河の酸素の割合は、我々の銀河系に現在含まれている酸素の割合の20%たらずであった。

酸素やケイ素、硫黄などの元素は、主に重たい星の爆発によって銀河中にばら撒かれると考えられている。銀河の年齢が大きいほど爆発が多く起こったことになるので、これらの元素の割合が大きくなる。遠方銀河に含まれる元素の割合を調べれば、こういった元素の「汚染」が進む率を調べられるというわけだ。可視光線や紫外線による観測ではチリの影響など複雑なことを考えなければならないが、X線なら直接酸素などの量を調べられる。この利点は大きいと研究者たちは述べている。