パルサーの周りに見つかった二重の衝撃波領域

【2003年2月28日 Chandra Photo Album

NASAのX線観測衛星チャンドラが撮影した画像と可視光の画像を組み合わせることで、パルサーと呼ばれる天体の周りに二重の衝撃波領域があるようすが明らかになった。

(二重衝撃波領域の画像)

パルサーB1957+20周辺の画像。X線の画像は赤と白で、可視光の画像は青と緑で色をつけたものを合成している。中心の明るく白い点がパルサー(提供:X線:NASA/CXC/ASTRON/B.Stappers et al.、可視光:AAO/J.Bland-Hawthorn & H.Jones)

この天体はB1957+20という番号のつけられたパルサーで、5000光年かなたの「や座」の方向にある。パルサーとは、超新星爆発の後に残された高速に回転する中性子星のことだ。B1957+20の場合は1600分の1秒という超高速で回転しており、ミリ秒パルサーという分類の天体になる。参考までに、有名なかに星雲パルサーの場合は約30分の1秒で回転している。

図中、緑の三日月状に見えているところは可視光で観測された衝撃波領域である。これは、パルサーが銀河の中を時速約100万kmで移動しているために発生したものだ。図の中心付近に見える赤い繭のような部分が、X線観測で見つかった2つ目の衝撃波領域である。パルサーの周りにこのような二重の衝撃波領域が見つかったのは初めてということだ。

B1957+20は年齢が数十億歳と見積もられており、とても古い天体である。しかし、連星の相手の星から剥ぎ取った物質がこのパルサーに降り続けて回転が高速になったため、強烈な電磁力を生み出す若々しいパルサーとして高エネルギーを放射し、繭のような衝撃波領域ができあがったのである。高速回転がこの現象のカギということがわかったが、研究者たちはさらに理論を検証したいとしている。