ハッブル宇宙望遠鏡で月面上の資源を探す

【2005年10月26日 HubbleSite Newsdesk

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)といえば、はるか遠くにある銀河や、銀河系内の星雲・星団、外惑星のクローズアップなどの、すばらしい天体画像でおなじみだが、現在NASAがHSTで観測しているのは地球にもっとも近い天体、月だ。その目的は、将来の有人探査に役立つ資源を探すことにある。

(ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた月面画像)

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた月面画像。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and J. Garvin (NASA/GSFC))

NASAはHSTの性能を生かし、初めて月面の高解像度な紫外線画像を撮影した。これまで、月は“明るすぎる”という理由から、HSTの筒先が向くことはなかった。月面の紫外線画像からは、月の表面にどのような鉱物が存在し、どのように分布しているかを探る重要な手がかりが得られる。他のデータとあわせて、将来の月における無人および有人探査の候補地選びに役立てるという。

中でも重要なのは、チタン鉄鉱(チタンと鉄の酸化物)などのように酸素を取り出すことができる鉱物だ。月には大気がないので、人間が月に長期滞在するには酸素が欠かせないが、その全てを地球から運ぶとなるとたいへんだ。そこで、なんとか現地調達しようというわけだ。酸素はロケットの燃料としても利用できる。

HSTによる月面の観測には、すでに地質学的に特異なことが知られているポイントがいくつか選ばれた。アリスタルコス・クレーター、シュレーター谷といった場所に加えて、アポロ15号が着陸したハドリー渓谷、17号が着陸したタウルス・リトローも含まれている。

NASAの専門家は「今回の調査結果が出そろうまでには数ヶ月かかるが、HSTによる観測が将来探査を行う候補地を絞るのに大きく貢献すると確信している」と語った。ちなみに、今のところアリスタルコス・クレーターやアポロ17号着陸地点付近のタウルス・リトローには酸素を含む鉱物が豊富に存在していて、探査に向いているとのこと。目指すは、「月における自給自足の生活」だ。