カッシーニ最新画像:土星の大気活動と衛星の最新画像(ミマス、レア、テレスト)
【2006年3月8日 University of Iowa News Release / JPL Cassini-Huygens Multimedia Images (1) / (2) / (3) / (4)】
土星周回軌道に入って1年半以上。土星探査機カッシーニの観測はまだまだ終わらない。土星やその衛星の新しい表情が、連日地球に送られてきている。
土星の嵐と雷
太陽の光があたらない、土星の夜の部分も、リングで反射した光によってほのかに照らされることがある。夜間のうちにカッシーニがカメラを向けたこの写真には、雷雲が浮かび上がっている。ここでは、土星の観測史上最大級の嵐が起こっているという。その範囲は北アメリカ大陸の広さにも及び、雷の強さは地球の雷の1,000倍以上だ。嵐がどのようなメカニズムで起きているかについては、ほとんどわかっていない。
なお、この雷の「雷鳴」を聞くこともできる。地球上で雷が発生したときにラジオを聞いていると雑音が混じるが、これは強力な電波が発生するからだ。同様に発生した、土星の雷に伴う電波はカッシーニの電波・プラズマ波観測装置(RPWS)によって観測され、 Space Audio(University of Iowa)内で "Cassini Listens to Lightning at Saturn"(カッシーニ、土星の雷を聞く)として公開されている。
直径の違い、300倍
こちらも、リングに照らされた土星の夜をとらえた一枚だ。手前には、衛星ミマスが写っている。直径397キロメートルの氷のかたまりと、直径12万キロメートルを超える巨大ガス惑星の大きさの差が歴然としている。
この写真は、2006年1月20日に、カッシーニが可視光で撮影した。ミマスからカッシーニまでの距離は140万キロメートル。
擬似カラーで浮かび上がるレアの真実
レアの直径は1,528キロメートルで、土星の衛星としては二番目だ。その表面は、他の、より小さな衛星に負けず劣らず変化に富んでいる。誰もが気づくのは、無数のクレーターの存在だろう。だが、紫外線・可視光・赤外線で撮影した画像を組み合わせた疑似カラーでは、レアは別の表情も見せる。衛星を南北に貫く、筋模様だ。
レアはほとんどが氷でできている。筋の部分が他と違う色で浮いて見えるのは、成分がわずかに違うか、表面を覆う氷の粒の大きさが違うからと考えられている。ではそもそも筋が見えているのはなぜだろうか。これについては、氷火山の噴火があったとする仮説が提唱されている。
羽毛のような雲
土星を巡る周回軌道に乗って1年半、カッシーニは土星の北半球を高解像度で撮影しはじめている。現在北半球は、昼よりも夜の方が長く、地球で言うところの冬を迎えている。惑星大気を研究する科学者としては、冬の北半球と夏の南半球で見かけ上どんな違いがあるのか気になるところだ。
この写真には、冬の北半球における雲が写っている。どことなく地球の雲に似た面影もあるかもしれない。その形から、大気が渦巻くように動いていることがわかる。土星の表面で今何が起きていて、そこから見上げた空と雲はどんな表情をしているのかは、科学者でなくても気になるところだ。
写真は可視光で撮影された。このときの土星とカッシーニの距離は290万キロメートル。
テレストのなめらかな表面
土星の衛星は、どれも無数のクレーターで覆われて、個性的な表情をしている。その傾向は、小さな衛星ほど顕著だ。ところが、直径わずか24キロメートルの衛星、テレストはそうでもなかった。「のっぺらぼう」とまではいかないものの、いくつかのクレーターと岩の存在を除けば、氷で覆われたその表面は実になめらかだ。
画像はテレストから1万4,500キロメートルの距離から、2005年10月11日に撮影されたもの。
土星の衛星は現在47個以上見つかっています。探査機の観測が進むと、この数はもっと増えることでしょう。土星の衛星は姿がさまざまです。巨大クレーターと無数の小さなクレーターでおおわれたミマス、クレーター領域としわのある領域をもつエンケラドス、ツートーン模様になっているイアペタスなど、表情豊かな衛星がそろっています。(「太陽系ビジュアルブック」より一部抜粋)