カッシーニ最新画像:環の厚み方向にも間隙があった!
【2006年7月19日 Cassini Multimedia Feature (1) / (2) / (3) / (4)】
土星の環が1本のリングではなく、いくつもの間隙(すきま)で仕切られた多重構造をしているのはご存じのとおりだ。もっとも有名でもっとも大きいのがカッシーニの間隙だが、同じ名前を持つNASAとヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機が、土星初となる発見をした。環を内側と外側ではなく、上下に分ける間隙だ。その他の画像とあわせて紹介しよう。
E環は上下方向にも分けられている
土星の環の中でもっとも外側にあるのがE環だ(解説参照)。その由来が衛星の1つ・エンケラドスから吹き出した粒子(氷や水蒸気)だということが、カッシーニの探査によって明らかにされつつある。環の形成プロセスも興味深いが、エンケラドスの存在はE環にさらにユニークな特徴を与えているようだ。それが、土星の環の中で初めて見つかった、厚み方向の間隙だ。
右上の画像はE環を真横から捉えたもので、カッシーニが2005年12月1日に撮影した。環は確かに二重に見える。中心付近にはほとんど物質がなく、上下に500〜1000キロメートルずつ離れたあたりには多く存在しているようである。このように見えるのは、環を構成する粒子が土星の周りを公転するときに、円盤面に沿った軌道ではなく微妙に傾いた軌道を回っているからだ。きれいに上下に分かれて見えるということは、すべての粒子の傾きが、ごく限定された範囲にあることを意味する。
理由は2つ考えられる。1つは、エンケラドスから吹き飛ばされて土星周回軌道に乗る粒子は速度が一定なので、結果として軌道の傾斜角も限定されるというもの。もう1つは、もともと粒子の軌道傾斜角はばらばらだったが、ほとんど傾きのない軌道を通る粒子はエンケラドスが通過する際に重力的影響を受け、散乱してしまったというものだ。
すべてを明らかにするにはさらなる観測とシミュレーションが必要だ。カッシーニの画像解析に携わるJoseph Burns博士は、「(E環の)構造を把握するためには、良い位置から撮影した画像があと何枚かほしいところです。そうすれば、いくつかのモデルで検証して、環を構成する粒子がこうもはっきりとした形に並ぶ理由を知ることができます」と語る。
タイタンとレアの口づけ
土星最大の衛星とそれに次ぐ衛星のツーショット。タイタンにレアが重なり、まるでキスを交わすかのようなシーンをカッシーニが捉えた。太陽の反対側に近い位置からの撮影だが、大気を持たないレアはほぼ真っ黒に見える一方で、濃厚な大気に覆われたタイタンは輪郭がぼんやりと照らされている。見方を変えれば、黒真珠の指輪のようでもある。
この画像は今年の7月11日に、直径5150キロメートルのタイタンからおよそ530万キロメートル、直径1528キロメートルのレアからはおよそ360万キロメートル離れた位置から撮影された。カッシーニが土星周回軌道に入ってから2年以上、衛星や土星の珍しいスナップショットも数々地球に届けられている。
黄金の巨人
巨大な土星を巡る、さまざまな顔ぶれの衛星たち。いまやカッシーニもその一員だ。無数の天体を統べる土星、その黄金に輝く様は、威厳に満ちて見える。最後の画像は、そんな土星の横顔をとらえた一枚だ。カッシーニから土星への距離は約130万キロメートルで、環をほぼ真横から見る角度になっている。環そのものは土星を横切る細く黒い筋にしか見えないが、その影は土星の上側に大きく伸びている。
画像は、今年5月24日に撮影されたもの。赤、緑、青の3色で撮影された2組の画像を合成し、実際に人間の目で見える色合いに近くなるように調整されている。太陽−土星−カッシーニのなす角度は139度で、画像スケールは1ピクセルあたり76キロメートル(拡大画像)となっている。
土星の環
土星のリング(環)は、ドーナツ状の薄い一枚板のように見えるが、実際は数センチメートルから数メートルほどの細かい氷の粒や岩が数え切れないほど集まってできたもので、厚さは数百メートルほど。氷の粒や岩がまばらにつながって線状のリングを形成していて、これが1000本以上集まって円盤状に見えている。土星でよく知られているリングは7本ある。土星本体から近い順番にDリング、C、B、A、F、G、Eと名前がつけられている。(「150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室」Q.70 土星の環はどうやってできた? より一部抜粋 [実際の紙面をご覧になれます])