カッシーニ最新画像:土星の南極に目をもつ巨大な嵐
【2006年11月17日 NASA Mission News】
NASAとESAの土星探査機カッシーニが、土星の南極に直径8千キロメートルの嵐を発見した。木星の大赤斑ほど大きくないが、渦の回転速度は猛スピードである。また、地球以外で観測された嵐としては初めて、中心に目が見つかった。
カッシーニがとらえたのは、地球の直径の3分の2ほどもある土星の嵐。その中心には、台風に見られるような目がはっきりと存在している。また、中央から2つの雲の腕も伸びている。このような中心に目をもつ嵐が地球以外の惑星に見られたのは、初めてのことだ。
規模の比較では土星の渦と比べものにならない木星の大赤斑でさえ、その中心に目はなく、まして中心の活動は比較的おだやかだ。一方、この土星の嵐は時速550キロメートルという猛スピードで時計回りに渦を巻いている。また、目を取り巻いて渦を作っている雲の高度は30〜70キロメートルほどで、地球で雷雨をもたらす雲に比べ5〜7倍も高い。
中心に目が存在すると言えば、地球の台風やハリケーンも同じだ。台風やハリケーンは海洋上で湿った空気が内側に向かって集まり、垂直に上昇することで形成される。結果、中心付近では激しい雨が降るが、中心には空気が下降する円形の領域、「目」が形成される。
土星の嵐が地球の台風と同じメカニズムで形成されているかどうかは不明だ。少なくとも土星はガス惑星なので、嵐を引き起こす海洋は存在しない。また、動き回ることなく南極に張り付いている点も特徴的だ。
台風の目に雲が存在しないのと同じように、土星の嵐の目からは大気の奥まで見通せる。あらゆる波長にわたって、今までにない深さが観測できることに期待を寄せる研究者もいる。