ニューホライズンズによる木星画像:
中赤斑のカラー画像、イオの溶岩

【2007年5月7日 Science@NASANew Horizons News

NASAの太陽系外縁天体探査機「ニューホライズンズ」が、木星の中赤斑や衛星イオにおける火山噴火のようすなどをとらえた画像が公開された。これは同探査機が今年2月に木星へ最接近した前後に撮影したものだが、送られてきた膨大なデータのごく一部にすぎない。


木星の中赤斑

木星の中赤斑。ニューホライズンズのLORRIとハッブル宇宙望遠鏡の画像を合成したもの。クリックで拡大(提供:NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute、以下同様)

衛星イオの画像

左側の画像は、LORRIによるイオ。右側の上は、MVIC(マルチスペクトルカメラ)によるカラー画像。その下はLEISA(赤外線スペクトル分布測定計)による赤外線画像。クリックで拡大

衛星イオの画像

LORRIによる衛星イオ。イオの大気と噴火している火山が白っぽく写っている。右側に見える3つの明るい点は溶岩。クリックで拡大

ニューホライズンズは、2月に木星まで約230万キロメートルの距離に接近した。このスイングバイ前後の数週間、搭載されたカメラやセンサーなど7つの機器や、ソフトウェアのテストを兼ねた観測が行われた。木星やその衛星の観測は700回近くにおよぶ。これらの膨大なデータは探査機のデジタルレコーダーに記録された後、順次9.6億キロメートルもの距離を隔てた地球へ送られてきている。

公開された画像でまず目を引くのは、2005年末に白から赤へと色が変化した「中赤斑」のカラー画像だ。これは、ニューホライズンズに搭載されている望遠撮像装置(LORRI)による画像とハッブル宇宙望遠鏡による画像を合成したもの。中赤斑は地球の大きさ近くもある、地球上の台風とは比べ物にならないスケールで渦巻く雲で、反半時計周りに回っている。

また、これまでの観測でもっとも鮮明にとらえられた薄い木星の環(リング)には、研究者が予測していなかったアーク構造やちりの塊が見えた。これは、比較的最近環に小さな天体が作用したなごりと考えられている。

木星と共に観測された4つのガリレオ衛星の中で研究者がもっとも注目したのは、イオだ。たくさんの火山が存在するイオでは、太陽系の中でもっとも活発な地質活動が進んでいる。ニューホライズンズの画像には、衛星の表面の溶岩やガスの噴出が写っている。

また、エウロパの表面にはひび割れのような模様があるが、その大きさや深さが計測された。今後の分析で、エウロパを覆う氷の厚みなどに関する情報がもたらされると期待されている。

ニューホライズンズの木星スイングバイチームの副代表を務める米・サウスウエスト研究所のJohn Spencer氏は、「木星の観測で大量のデータを集めることができました。探査機のもつ能力は決してこれがすべてではありませんが、今回の観測で探査機がどんなにすばらしい観測を行えるかがわかりました」と話している。

現在、ニューホライズンズは木星の後ろに細くたなびく磁気圏に沿って飛行し、物質の分布を調べるなどしている。