水星の内部は液体だった―30年来の謎、解明へ
【2007年5月9日 JPL News Releases】
水星の電波観測で、中心の核が液状であることを示す磁場が観測された。水星の磁場はマリナー10号によって初めて発見されたが、以来30年間磁場の正体が何であるかは謎のままであった。
地球や木星は太陽系の惑星の中でも強い磁場をもっていることがわかっている。地球の場合、中心には鉄とニッケルでできた硬い核がある。その外側には、鉄とニッケルが液体の状態で存在する外核があり、その液体金属が流動することで電流が生じ、磁場が形成されている。
マリナー10号が水星観測を行った1970年代、水星の核は液体ではなく鉄でできた固体と考えられていた。しかし、水星に地球の1パーセントほどの微弱な磁場が発見された。当時の理論では、水星のような小さな惑星は形成後急速に冷えてしまい、中心の核も早く固まると考えられてので、磁場の正体は30年以上謎となっていた。
この謎を解明するため、コーネル大学のJean-Luc Margot博士らのチームは、2002年からゴールドストーン天文台の口径70メートル電波望遠鏡などを使い、18回にわたる観測を行った。
結果、水星の磁場の観測に成功したのだ。研究成果の著者の一人であるJPLのMartin Slade氏は、「水星に磁場が発見されるとは、研究者も予測していませんでした。しかし、発見された惑星の磁場は、液状の核に伴うものです。これで、水星が小さすぎて液体の核をもつことはできないという理論が否定されました」と話している。
しかし、溶解した核を数十億年もの間維持するには、核の物質の溶解温度を下げる働きをする硫黄などの軽い物質が必要だ。水星の化学的な組成がわかれば、核だけでなく、惑星形成に関する情報が得られる。またその情報は、なにより地球のような生命を育む惑星の形成や進化を理解する上でも、ひじょうに重要となる。
2004年に打ち上げられたNASAの水星探査機メッセンジャーは、2011年には水星周回軌道に入る予定だ。メッセンジャーによって、地上からの観測では得ることのできない、謎に対する答えがもたらされることが期待されている。