銀河系が所属するグループに「新入り」の矮小銀河発見

【2007年6月14日 W.M. Keck Observatory

われわれの銀河系は、アンドロメダ座大銀河やたくさんの矮小銀河とともにグループを形成している。このグループに、新たに加わろうとしている矮小銀河が見つかった。古参の銀河と違って、グループの影響を受けていないことから、銀河や銀河のグループが形成される過程を研究する上で重要な観測対象となりそうだ。


(アンドロメダXIIに属する星の位置を示した画像)

And XII。点で示されているのは性質を調べた恒星で、☆で記されたのがAnd XIIに所属しているとわかったもの。こうした観測を通じて、And XII自体の質量や移動速度などもわかってきている。クリックで拡大(提供:Scott Chapman, University of Cambridge)

太陽をはじめとした恒星がおよそ2000億個も集まり、直径10万光年の銀河系を形成している。一方、230万光年の距離には、ひとまわり大きなアンドロメダ座大銀河M31が存在する。近年、どちらも局部銀河群(解説参照)と呼ばれるグループに所属していることがわかってきた。

といっても、銀河系とM31以外は、恒星が数十万から数百万個しか存在しない「矮小銀河」だ。2大銀河の重力は支配的で、どの矮小銀河も変形していて、多くが「衛星銀河」であるかのように周回したり、さらには吸収されようとしている。すでに飲み込まれてしまった矮小銀河も少なくないようだ。

しかし、2006年10月に見つかった矮小銀河「アンドロメダXII(And XII)」は、局部銀河群に所属しながらも、銀河系やM31の影響をほとんど受けていないらしい。それは、And XIIが局部銀河群の外側で誕生し、重力で引き寄せられやってきたばかりの「新入り」だからだ。局部銀河群の中で年月を過ごした矮小銀河と違い、形成当時の特徴を残していると考えられる。

銀河系やM31ほどの規模を持つ銀河は、矮小銀河の衝突合併を通じて成長してきたらしい。大銀河どうしは局部銀河群のようにひとまとまりのグループを形成しているが、矮小銀河は、宇宙の中で網目状に広がる暗黒物質の中で生まれ、そこからより物質が密集した領域へと落ち込んでいくようだ。こうした過程を研究する上で、And XIIは貴重な観測対象となるだろう。

われわれの銀河系から見ると、And XIIはM31の方向にあり、M31からは37.5万光年離れている。M31の強い重力が支配する圏内を通ろうとしているが、移動速度があまりに速いのでそのまま振り切ってしまいそうだ。結局、局部銀河群には短期間しか在籍しないかもしれない。

局部銀河群

銀河は宇宙に単独でポツンと存在しているわけではない。何十個、何百個の銀河が群れをつくっているのが普通だ。この群れを銀河群と呼んでいる。実は天の川銀河も銀河群をつくっている。この銀河群は他の銀河群と区別するため、特別に「局部銀河群」という名前で呼ばれている。局部銀河群は、アンドロメダ座大銀河のほか、大マゼラン雲、小マゼラン雲など計17個。理科年表は「不確定メンバーを含めると全体で30個以上になる」としており、局部銀河群の構成メンバーははっきりしていないのが実情だ。(宇宙のなぞ研究室 Q105.天の川銀河のそばには何がある?より [実際の紙面をご覧になれます])