系外惑星の姿に新たな予想
巨大惑星は恒星から離れられない?

【2007年7月31日 UA News

われわれの太陽系の外に惑星が見つかりはじめたころ、その異様な姿は驚きをもたらした。木星よりも巨大な惑星が水星よりも太陽に近い軌道を回っていたからだ。だが最新の研究によれば、逆に恒星から大きく離れた巨大惑星こそ、珍しい存在らしい。


(ガス惑星の撮像器SDIの使用有無による画像の比較)

ガス惑星の撮像器SDIを使用する/しない場合の画像の比較。左側が使用、右が不使用の画像。クリックで拡大(提供:University of Arizona)

1995年以降、今までに発見された木星サイズの系外惑星の数は230個を越えた。そのほとんどがドップラー法とよばれる方法で発見されたものだ。

ドップラー法とは、恒星がわれわれに近づいたり遠ざかったりする速度(視線速度)の変化をとらえ、惑星の有無を間接的に調べる方法だ。惑星と恒星は重力で引き合い、互いの重心を軸に運動している。つまり、恒星も惑星の重力の影響で運動している。すると、地球から見た恒星の視線速度が変化する。この変化を解析すると、惑星の質量や公転周期などを推定することができるのだ。

この手法は、重い惑星ほど、また恒星の近くを周っている惑星ほど、恒星の視線速度の変動が大きくなるため発見しやすい。一方、ドップラー法による観測では、恒星から離れた惑星に関する情報を得ることはほとんどできない。太陽系以外の惑星系がどんなものなのか、平均的な惑星系とはどんなものか、われわれの太陽系は典型的な姿をしているのかを知るには、別の方法に頼らなければならない。

そこで、米アリゾナ大学、ヨーロッパ南天天文台(ESO)、独マックス・プランク天体物理研究所、イタリアのArcetri天文台、ハワイのケック天文台と米ハーバード・スミソニアン天体物理センターの研究チームは、巨大ガス惑星の撮像器を開発した。そして、地球に近い54個の近傍恒星をターゲットとした観測を行った。これらの恒星から5天文単位(1天文単位は太陽から地球までの距離で、5天文単位は太陽から木星までの距離に相当する)の距離には、木星ほどの質量をもつ惑星が存在していることがわかっている。

ガス惑星の撮像器SDIは、ヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLTのCONICA補償光学カメラと、アリゾナ大学とスミソニアン協会の施設であるMMT天文台のARIES補償光学カメラとともに観測に使用された。その結果、恒星から1秒角以内に存在するメタンガスの豊富な惑星をとらえることに成功した。今までに地上、あるいは宇宙から観測で、このような画像がとらえられたのは初めてのことだ。

しかし、3年間かけて行われたこの観測で、木星のように大きなガス惑星は、恒星から離れた外縁部に、ただの1つも姿を現すことがなかったのだ。これについてアリゾナ大学のLaird Close教授は、「わたしたちが実施した観測では、10天文単位以上の距離にある木星サイズの惑星を検出できることは確かなのです」と話している。

今回の観測によって、木星の4、5倍の質量をもつ惑星が恒星から20天文単位以上離れた距離に存在する確率は、ひじょうに少ないことが示されたのだ。太陽系内で20天文単位とは、太陽から天王星の軌道までの距離に相当する。研究チームでは、20天文単位から100天文単位の範囲には、惑星のオアシスと呼べるような領域は存在しないと結論づけている。