初期宇宙にモンスター銀河の群れを発見

【2009年5月12日 国立天文台

日米メキシコの国際共同研究チームが、約115億光年彼方に、爆発的な星形成を行っているモンスター銀河の集団をとらえることに世界で初めて成功した。


(観測された領域「SA22」の画像)

観測された領域「SA22」(左)アステとアステックがとらえた画像、(右)中心領域の拡大画像(赤:サブミリ波、緑:赤外線、青:ハッブル宇宙望遠鏡による可視光画像)。クリックで拡大(提供:国立天文台)

(モンスター銀河とライマンアルファ輝線銀河の数密度分布)

(左)モンスター銀河の数密度分布。白丸が銀河の位置で大きさはサブミリ波の明るさに対応、(右)115億光年彼方のライマンアルファ輝線銀河の数密度分布。白点が銀河の位置で青はライマンアルファ輝線銀河の個数が多い領域。クリックで拡大(提供:国立天文台)

(群れ集まるモンスター銀河の想像図)

群れ集まるモンスター銀河の想像図、右上はモンスター銀河のより詳細な想像図。クリックで拡大(提供:国立天文台 石川直美、武田隆顕)

モンスター銀河とは、天の川銀河の1000倍ほどのすさまじい勢いで星形成が起きている銀河である。約100億年前の宇宙において、物質が集積する場所で銀河や大量のガスが互いに衝突・合体して誕生したと考えられている。モンスター銀河は、その後約100億年を経て、現在の宇宙に見られる大質量銀河に進化したと考えられている。

国立天文台の田村陽一氏、東京大学の河野孝太郎氏らが率いる日米メキシコ国際共同研究チームは、モンスター銀河を探す目的で、みずがめ座の方向にある満月ほどの大きさの天域「SA22」を観測した。

観測に使われたのは、アステ(ASTE:アタカマサブミリ波望遠鏡実験)とそこに搭載されている新しいミリ波カメラ「アステック」だ。銀河の姿は大量のちりやガスにじゃまされて、可視光では見ることができない。しかし、モンスター銀河は、星の紫外線によってちりが暖められ、莫大なエネルギーが放出されるため、サブミリ波でひじょうに明るく輝くことがわかっている。

アステックによる観測で、従来の20倍もの観測面積がとらえられ、研究チームはその画像からモンスター銀河30個を発見した。

さらに、発見されたモンスター銀河が、ライマンアルファ輝線銀河の過密地帯に存在していることが明らかとなった。ライマンアルファ線銀河とは、ライマンアルファ線(水素原子が放射する波長122ナノメートルの紫外線)を放射する若い銀河である。モンスター銀河とライマンアルファ線銀河の両者は、性質は異なっているが分布が類似していたのだ。

銀河の密度がこのように高いということは、暗黒物質(ダークマター)の密度も高いことを意味している。現代の銀河形成理論では、暗黒物質の密度が高いところで、ひじょうに重い巨大な銀河が誕生すると考えられている。今回の観測は、理論の予想に一致する結果を得たことになる。

なお、研究チームでは、爆発的星形成を行う銀河が普遍的に銀河密度の高い領域に分布しているのか、どのくらい昔から爆発的に星を形成する銀河が誕生して、どのように現在の大質量銀河へと進化するのかなどの解明を目指し、他の領域についても、過去に例を見ないほどの大規模な観測を進めている。