太陽のような星に破壊される惑星

【2010年3月2日 Kavli Foundation

ぎょしゃ座の方向約800光年の距離にある系外惑星が、中心星の重力でラグビーボールのように形が歪み、内部で摩擦が起こって大きく膨らんでいるという研究成果が発表された。惑星は、中心星によって1秒間に60億トンもの質量を奪われていて、とても短命な運命にあるようだ。


(惑星系WASP-12の概念図)

中心星と惑星WASP-12b(紫)の概念図(茶色い丸は、存在が示唆されているもう1つの惑星)。クリックで拡大(提供:Courtesy: KIAA/Graphic: Neil Miller)

WASP-12bは、これまでに発見された400個ほどの系外惑星のなかでも、とくに変わった惑星である。

木星や土星のようなガス惑星で、太陽程度の質量の星のまわりを回っているのだが、星からの距離はたった200万kmほどで地球から太陽までの距離(1億5000万km)の75分の1しかない。理論計算による予測とは異なり、質量が木星の約1.5倍、半径は木星の約1.8倍もある。さらに、昼側の温度は摂氏2500度と異常に熱い。

WASP-12bの観測データの分析を行った、中国国家天文台Shu-lin Li氏らの研究チームによると、惑星を予想以上の大きさにしているメカニズムは、潮汐力にあるという。

たとえば地球の場合、地球と月の間で働く潮汐力によって海の満ち引きが起こる。WASP-12bは中心星にひじょうに近いため、重力の影響がかなり大きい。その力は、惑星をラグビーボールのような形に歪めてしまうほどのとてつもなく強いものだという。

さらに、惑星は形が歪められているだけではない。継続的に惑星が変形するため、内部で摩擦が起こり、その熱で惑星が膨張する。Lin氏は、「惑星内部の潮汐加熱で惑星が膨張していることを示す初めての証拠が得られました」と話している。

WASP-12bのように大きく膨らんだ惑星は、自らの質量を中心星の重力から守ることはできず、すぐに最期を迎えると考えられている。惑星の将来についてLin氏は「WASP-12bは、1秒間に60億トンもの質量を中心星にうばわれています。このままいけば、1000万年以内に完全に崩壊します。ずっと先のことのように感じるかもしれませんが、天文学的にはほんの一瞬です。WASP-12bは地球誕生から現在までの時間の、500分の1も生きられないのです」と説明している。

なお、WASP-12bからはぎとられつつある質量は、中心星に直接落ち込んでいくのではない。中心星のまわりに円盤を形成し、渦を巻きながらゆっくりと内側にむかっている。この円盤は観測可能であるため、今後の研究で、WASP-12bがたどる運命が詳しく明かされるかもしれない。

ステラナビゲータ Ver.8で系外惑星の位置を表示

ステラナビゲータ Ver.8では、系外惑星WASP-12bの位置を星図に表示させることができます。惑星の存在が確認された恒星約360個(ニュース公開時点)を追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しています。ステラナビゲータ Ver.8をご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。