2つの視点から撮影した、彗星の太陽突入

【2010年6月1日 UC Berkeley News

NASAの太陽観測衛星STEREOが、太陽に突入していく彗星の姿をとらえた。この彗星には金属などの重い物質が含まれていたために、これまで太陽に衝突した彗星の中では、もっとも深く太陽の大気中に入り込み、その後10万度という高熱に包まれて蒸発したと推測されている。


(STEREOの双子の衛星AとBによる、太陽に突入する彗星の画像)

STEREOの双子の衛星A(右)とB(左)による、太陽に突入する彗星の画像。クリックで拡大(提供:NASA, UC Berkeley)

(マウナロア太陽観測所がHα光(紫外線)で観測した太陽の縁と接近していると思われる彗星の画像)

マウナロア太陽観測所がHα光(紫外線)で観測した太陽の縁へ接近中と思われる彗星の画像。クリックで拡大(提供:Claire Raftery, Juan Carlos Martinez-Oliveros, Samuel Krucker/UC Berkeley)

米・カリフォルニア大学バークレー校 宇宙科学研究所のMartinez-Oliveros氏は、米・ハワイ州マウナロア太陽観測所や、NASAの太陽観測衛星STEREOSOHOによって観測されたある彗星に注目していた。その彗星から伸びる明るく長い尾が、これまでにSTEREOなどが数多く観測しているクロイツ群の彗星のものと似ていたからである。

クロイツ群とは、太陽をかすめる(時には衝突する)ような軌道を持つ彗星の一群で「Sungrazer(太陽をかすめる彗星の意味)」などとも呼ばれている。その起源は、ある彗星が太陽に近づいたときに分裂し、その破片がばらばらに回帰していると考えられている。

Martinez-Oliveros氏ら研究者4人のグループは、この彗星が太陽のまわりに環を描くような経路を辿ると仮定し、STEREOのデータから軌道が計算できるかを試みた。

その計算から、太陽への衝突2日前までに彗星の接近経路が明らかになり、衝突範囲も直径1000kmの円形内に想定された。

続いて、マウナロア太陽観測所のオンラインデータをもとに、太陽の縁に向かって外側からやってくる彗星の姿をとらえることができるかが調べられた。その結果、太陽面の上空数千kmの高度にある数百万度のコロナと10万度の彩層の間を6分で通過するという短い経路が明らかになった。

右1枚目の画像は、今年3月12日〜14日にかけてSTEREOの2基の衛星AとBがそれぞれ別の場所から観測した、太陽に接近する彗星の画像である(なお、以下のリリース元では接近する彗星の姿をとらえた動画を見ることができる)。

研究チームの一人、Claire Raftery氏は「太陽コロナ中これほど低高度で飛んでいく彗星を立体的に追跡したのは、これが初めてのことだと思います」と話している。

なお、研究チームでは、この彗星が長さ約300万kmという比較的短い尾を持っていることから、金属などの重い物質が含まれていたと推測。そのため、彗星はそれほど急激に蒸発せず、コロナの熱に耐えて彩層の奥深くにまで到達した後、摂氏10万度の熱に包まれて消滅したと考えている。