板垣さん、おおぐま座の銀河に新天体を発見、
分光観測で変光星らしいことが判明
【2010年6月2日 VSOLJニュース(243)】6月3日更新
新天体捜索者の板垣公一さんが、おおぐま座の銀河NGC 3184に新天体を発見した。発見当初は超新星と思われ2010dnの符号が付けられたが、その後の分光観測で、この天体は超新星ではなく高光度青色変光星(LBV)が増光したものらしいと判明した。
VSOLJニュースより
6月に入り、梅雨入りも間もなくとなりました。夏至も近づいて夜が短く、天体観測には少々困難が伴う季節です。そんな折り、日本人アマチュア天文家によって超新星が発見されました。発見したのは、山形県山形市の板垣公一(いたがきこういち)さん、これまで多種多様の新天体を発見してきた、日本を代表するベテラン天体捜索者です。
板垣さんは、5月31.523日(世界時、以下同様)に60cm望遠鏡で撮影した画像に、17.5等級の新しい光点を見いだしました。その位置は以下のとおりで、おおぐま座の渦巻銀河NGC 3184の中心核から東に33秒角、北に61秒角にあたります。銀河の腕に沿った場所です。
赤経 10時18分19.89秒 赤緯 +41度26分28.8 秒 (2000年分点) NGC 3184周辺の星図とDSS画像に表示した2010dn
天体は、宮城県大崎市の遊佐徹(ゆさとおる)さんによって確認され、公表されました。10日ほど前にはこの位置にこれほどの明るさの天体はありませんでした。
NGC 3184は、距離が10Mpcあまりの銀河です。新天体がこの銀河に属するものとして、発見時の絶対等級はマイナス12.8等級ほどで、典型的な超新星よりかなり暗いものです。この暗さが、母銀河内の吸収によるのか、それとも天体の特異性によるのか、今後の分光観測によるタイプの判別や、光度変化の追跡が待たれます。
《6月3日更新分》
その後の分光観測で、この天体は高光度青色変光星(LBV)が増光したものらしいと判明しました。
以下は、山岡さんによる続報の一部引用です。
NGC 3184の新天体は、分光観測の結果、明るい青色変光星の増光であろうと判明しました。活発な捜索の結果、これまで見逃されてきたこのような増光がとらえられるようになり、この種の天体の理解が進むことが大いに期待されます。
なお、従来アストロアーツニュースでは、板垣さんが発見した超新星の個数には高光度青色変光星は含めていませんでした(今年2月の2010U)。しかし、変光星と判明した後も超新星符号が付けられたままであること、過去にもこのような天体が含まれていた可能性があること、今後も発見される可能性があること、などを考慮し、以後は「超新星符号が付けられた天体の発見」を「超新星発見個数」としてお伝えすることといたします(符号が外された場合には減りますが、IAUがどのように判断するかは不明です)。この結果、板垣さんによる超新星(超新星符号が付けられた天体)の発見個数は、通算61個となります。
新天体2010dnの位置
この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行ってください。
また、新しいデータや番組を入手できる「コンテンツ・ライブラリ」では、簡単にダウンロードして星図に一覧表示できる「板垣さんが発見した超新星」と「日本人が発見した超新星」も公開しています。あわせてお楽しみください。