天の川銀河の年老いた星はどこから来たか
【2010年7月1日 RAS】
大規模なコンピュータシミュレーションによって、現在天の川銀河の周囲に存在している年老いた星は、50億年ほど前に起こった銀河同士の衝突の影響で、もともとの住処であった銀河から引きはがされた残骸であることが示された。
英・ダーラム大学のICCは、独・マックスプランク天文学研究所およびオランダのフローニンゲン大学と協力し、ビッグバン直後の約130億年前から現在までの、天の川銀河が進化してきたようすを再現する大規模なコンピュータシミュレーションを行った。
その結果、天の川銀河を取り巻くハロー(銀河を球状に取り巻く領域)に存在する年老いた星は、初期宇宙で起こっていた銀河同士の衝突の影響で、もともとの住処であった銀河から引き離された残骸であることが示された。
宇宙論による予測では、初期宇宙には小さな銀河が数多く存在していたとされる。小さな銀河は、銀河同士の衝突によって激しく短い一生を終えていった。そのような衝突が繰り返され、残骸が残されるなどしながら、天の川銀河のような大きな銀河に進化してきたと考えられている。天の川銀河に存在する多くの年老いた星の起源は天の川銀河そのものではなく、別の銀河で100億年ほど前に誕生したことも推測されている。ダーラム大学の研究者をはじめとるする研究チームによるシミュレーションは、そのことを支持する結果を示したのである。
ダーラム大学のAndrew Cooper氏は、「私たちが行ったシミュレーションは、現在の天の川銀河に見られる、まるで遺跡のように古い星の存在が、遠い過去に起こった現象と関係あることを示しています。古い地層を調べると地球の歴史を知ることができるように、銀河のハローには、わたしたちの太陽が誕生するずっと以前に、天の川銀河が経験したドラマチックな進化の情報を残しているのです」と話している。
シミュレーションでは、現在の天の川銀河に見られるハローの構造や、小さな銀河から暗黒物質の重力によって引き剥がされてできた星の流れなどが詳細に再現されており、これまでに行われたシミュレーションのなかでも、かなり現実に近いものとみられている。