西山さん椛島さん発見の新星は、ガンマ線を放射する新種天体だった
【2010年8月16日 京都大学/NASA/広島大学】
NASAのガンマ線天文衛星フェルミのチームと、京都大学花山天文台、広島大学のかなた望遠鏡をはじめとする可視光観測チームが行った観測で、福岡県の西山さんと佐賀県の椛島さんが今年3月に発見した新星の爆発に伴って1億電子ボルトのエネルギーをもつガンマ線が放射されていたことが明らかになった。
新星は、それまで暗かった星が数日のうちに1万倍以上も明るく輝き始める現象で、わたしたちの天の川銀河の中では、年間10個ほどの新星が発見されている。福岡県久留米市の西山浩一(にしやまこういち)さんと佐賀県みやき町の椛島冨士夫(かばしまふじお)さんは、今年3月11日に撮影した画像から、変光星の1つとして知られる「はくちょう座V407」がおよそ7等級の明るさに増光していることを発見した。
このはくちょう座V407を京都大学花山天文台や広島大学のかなた望遠鏡(口径1.5m)などで可視光観測した結果、秒速約3000kmの速度で膨張する物質の存在がわかり、はくちょう座V407が新星爆発を起こして明るくなったことが明らかになった。
可視光観測によって新星爆発が発見されてから約1週間後、NASAのガンマ線天文衛星フェルミによって、この新星と同じ方向に、ガンマ線を放つ新天体が現われたことが発見された。
詳しい解析の結果、新しいガンマ線天体は新星爆発の直後から見え出し、その後ガンマ線が弱くなっていったことが明らかになった。そのほか様々な観測データとあわせて、このガンマ線は、はくちょう座V407の新星爆発に伴って放出されたものであることが示された。
はくちょう座V407は、白色矮星と赤色巨星の2つの星が、お互いの周りを回り合っている共生星と呼ばれる天体で、およそ9000光年先にある。赤色巨星の表面からは水素ガスがゆっくりと放出されており、その一部は白色矮星の表面に降り積もっていく。
今年3月に観測された新星爆発は、白色矮星の表面に降り積もった大量のガスの温度や密度がじゅうぶん高くなり、核融合反応を爆発的に起こした現象だ。降り積もったガスはこの爆発によって秒速数千kmの速さで吹き飛ぶが、白色矮星や赤色巨星そのものは爆発後も残り、しばらくすると再びガスが白色矮星に積もり始める。
はくちょう座V407では、赤色巨星からゆっくりとガスが放出されているため、周辺は遅い速度(秒速数十km程度)で広がりつつあるガスが取り巻いている。今回発見された1億電子ボルト以上ものエネルギー(可視光の約1億倍以上のエネルギー)をもつガンマ線は、新星爆発によって生じた高速(秒速数千km程度)で膨張する物質と周辺にある速度の遅いガスの衝突により粒子が光速近くまで加速され、その加速された粒子がさらに他の粒子と衝突したことで生じたと考えられている。
この研究により、新星爆発に付随してガンマ線の放出が起こることが明らかになり、高エネルギーガンマ線を放射する新種の天体の発見となった。この発見は、超新星残骸で起きている粒子加速現象が新星爆発でも起きていることを示唆しており、これまで高エネルギーのガンマ線を放たないと考えられてきた新星爆発に関する常識を覆す結果となった。
はくちょう座V407の位置
この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行ってください。