天の川銀河の中心に浮かぶ「無限大」のリング

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【2011年7月20日 赤外線天文衛星ハーシェル

赤外線天文衛星「ハーシェル」が、天の川銀河の中心部に存在するねじれたリング状の不思議な星雲をとらえた。これまでその一部が観測されていたが、今回初めてねじれた形状の全容が明らかになり、新たな謎を生んでいる。


「ハーシェル」がとらえたリング構造

「ハーシェル」がとらえたリング構造。青が高温、赤が低温の部分。模様のイラストを重ねてある。クリックでイラストなしで拡大(提供:ESA/NASA/JPL-Caltech)

銀河NGC 1097

銀河NGC 1097。私達の天の川銀河も、同じような中心の棒構造とリング構造を持つと考えられる。この銀河に関しては中央がねじれているかどうかは不明。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

今回「ハーシェル」が観測したのは、極低温(絶対温度15度=摂氏マイナス258度)のガスやダストが長さおよそ600光年にわたってチューブ状に集まって見える星生成領域だ。高精度なサブミリ波観測により、今まで知られていなかったリングの詳細な姿が見えてきた。よじれた中央部から双方に広がっており、無限大の記号(∞)のように見える(画像1枚目)。

国立天文台野辺山の電波観測で濃いガスの流速を調べたところ、リング全体が銀河に対して同じ相対速度を持っていることがわかった。

このリングは天の川銀河中心の棒構造の中にあり、その棒構造自体もさらに大規模なリングに包まれている(画像2枚目)。

銀河の渦巻構造や棒構造がどのようにして形成されるのかはよくわかっていないが、重力の干渉で形成される様子がコンピュータシミュレーションで再現されている。他の銀河の重力の影響で棒構造が作られるという理論モデルもあり、例えば天の川銀河の棒構造は隣のアンドロメダ座大銀河によるものという説もある。

今回明らかになった中で不思議なのは、ねじれが存在するということだけではない。ねじれの中心が、銀河の中心からわずかにずれているというのだ。天の川銀河の中心は「いて座A*」と呼ばれる電波源で、巨大ブラックホールがひそむと考えられている。それがこのずれとどのように関わっているのか、謎はまだまだ深そうだ。

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