すばる望遠鏡、赤外線主焦点での観測を再開
【2011年10月17日 すばる望遠鏡】
7月2日の冷却液漏れのトラブルのあと、ナスミス焦点、カセグレン焦点での観測を再開していた「すばる望遠鏡」が、9月22日に赤外線用主焦点での観測も再開した。可視光用主焦点は、数か月後の再開に向けて修復作業が続いている。
7月2日に主焦点部からの冷却液漏れトラブルに見舞われた国立天文台のすばる望遠鏡(米ハワイ島)では、7月22日からナスミス焦点、8月26日からカセグレン焦点での共同利用観測が再開されている。
赤外線用主焦点においても、9月20日の試験観測後、9月22日から共同利用観測が再開された。この焦点では、ファイバー多天体分光器(FMOS)を用いた観測が行われる。
FMOSは、すばるの主焦点でとらえた広い領域内で、最大で400もの天体の光を近赤外線で同時に分光観測(注)することができる装置だ。遠方の銀河やクエーサー、星団の中の星など、さまざまな天体を統計的に研究するときに威力を発揮する。
この観測に用いられる赤外線用主焦点ユニットは、冷却液漏れを起こした可視光用主焦点ユニットとは別のものだが、ケーブル巻き取り機構など主焦点ユニットとして共通する部分も多いため、観測再開にあたっては事故調査報告書に挙げられた改善案に沿ってさまざまな安全対策がとられたという。
障害発生時に使われていた可視光用主焦点ユニット(主焦点カメラ Suprime-Camおよび周辺光学系)については、数か月後の観測再開に向けて修復作業が進められているところだ。
注:「分光観測」 天体からの光を波長別にわけてスペクトルを求める観測。天体に含まれる元素の種類や温度などがわかる。