狼の皮をまとった羊のような惑星状星雲
【2012年2月21日 NASA】
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した惑星状星雲「Hen 3-1333」の画像が公開された。この星雲の中心にある「ウォルフ・ライエ型星」は、小さいながらも非常に高温で激しい表情を見せている。
惑星状星雲とは、太陽程度の質量の恒星がその一生の最期に外層の大気を吹き出している状態の天体で、惑星のように見える(実際にはまったく無関係)ことから名づけられた星雲だ。
さいだん座の天体Hen 3-1333もそのような惑星状星雲の1つであり、その中心には太陽のおよそ60%の質量を持つ恒星が存在している。明るさが周期的に変化しているが、これは周囲の塵の円盤がほぼエッジ・オン(地球から見て円盤を真横から観測するような向き)であり、周期的に恒星の光をさえぎっているためと思われる。
Hen 3-1333は「ウォルフ・ライエ型星」という恒星の進化の最期の段階にいる。これは非常に大きく明るく光る「ウォルフ・ライエ星」という青色巨星の一種にちなんで名づけられている。ウォルフ・ライエ星は、非常に強烈な恒星風によって外層の水素を吹き飛ばし、中にあるヘリウムが高温で燃焼している様子が見られる。それに対しウォルフ・ライエ型星では、少しずつ外層のガスを放出した結果、内側のヘリウムの層が見られていると考えられている。
ヘリウムという恒星の中心部分の層が見えているため表面温度は非常に高く、太陽表面温度のおよそ5〜10倍に近い2万5000度から5万度にも達していると考えられる。
ウォルフ・ライエ星のように激しい表情を見せるものの、その中にいるのは非常に小さい恒星だ。まるで狼の皮を被った羊のようでもある。