空飛ぶ天文台でとらえた、死んでいく星の姿

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2012年4月6日 NASA

飛行機に望遠鏡を乗せ、地上のどの望遠鏡よりも高い場所で観測を行う「SOFIA」が、死んでいく星の姿をとらえた。地上では大気が邪魔してできない観測を地球から離れることなく行うことで、科学的な価値はもちろん、新しいタイプの天文台が持つ可能性を示す成果を達成した。


ミンコフスキー2-9

「SOFIA」がとらえた惑星状星雲M2-9。死期が近づいた太陽のような星の姿だ。クリックで拡大(提供:NASA/DLR/USRA/DSI/FORCAST team)

NASAの空飛ぶ天文台、「SOFIA」(遠赤外線天文学成層圏天文台)が、太陽のような星が死んでいく際に吐き出す最後の息をとらえた。SOFIAは、口径2.5mの反射望遠鏡を飛行機(ボーイング747SP)に設置し、高度14Kmの空で観測を行う新しい種類の天文台である。

SOFIAが観測した天体は、へびつかい座方向にある「M2-9(ミンコフスキー2-9)」という蝶のような形の惑星状星雲だ。この天体の姿が3種類の赤外線波長でとらえられ、合成画像として映し出された。小さな望遠鏡で見るとまるで惑星のように見えるため惑星状星雲と呼ばれるが、その実体は、太陽のような星が寿命を終えるときに吹き出した物質からなる星雲の一種である。

「SOFIAによる画像は、死んだ星から放出された物質が次世代の恒星や惑星に再利用されることを見せてくれる完璧に近いものです。SOFIAから得られた鮮明なローブ状の姿は非常に満足のいくものでした。これらの初期成果は、重要で新しいタイプの天文台が持つ可能性を証明してくれます」(NASAジェット推進研究所のMike Werner氏)。

SOFIAによるM2-9の画像では、星雲の形が直線状で、まるで円柱や砂時計のように見える。このような形状は、星雲の中心に位置する死につつある星の周囲の円盤によって引き起こされた、高速で互いに反対方向に流れる物質により生み出されたと考えられている。SOFIAによるM2-9の観測は、このアウトフロー(物質の流れ)を詳しく研究して星の進化の最終段階をよりよく理解することを目指している。これを知ることは、天の川銀河の進化を理解することにつながるのである。