超新星1987Aの残骸から放射性チタンを検出
【2012年10月19日 ESA】
天文衛星「インテグラル」が、超新星1987Aの残骸から大量の放射性チタンを検出した。超新星爆発という劇的なプロセスへの理解を深める成果となる。
恒星の内部では水素が核融合によってヘリウムに変換されエネルギーが生み出されている。太陽の8倍以上の質量を持つ恒星は、水素という燃料を使い切ると自身の重力で収縮を始める。収縮によって恒星の内部温度はさらに上昇し、チタン、鉄、コバルトやニッケルなど重い元素も作られるようになる。やがて中心核が崩壊すると、その反動で劇的な超新星爆発が起こり、膨大なエネルギーとともにさまざまな元素が宇宙空間にばらまかれる。
その後、爆発で合成された放射性元素の崩壊で生み出される放射線が超新星の残骸を光らせる。さまざまな放射性元素は崩壊の際にそれぞれ固有のエネルギーのX線やガンマ線を放出するため、超新星爆発でばらまかれた物質の化学組成を調べることができる。
1987年2月に大マゼラン銀河に現れ肉眼でも見えるほど明るく輝いた超新星1987Aは、爆発がピークに達している間は噴出物の外層に含まれる酸素からカルシウムまでの元素が見つかった。直後には、内部層で起こったニッケル56からコバルト56へ、さらに鉄56へと続く放射性崩壊も見えた。
そして今回、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の天文衛星「インテグラル」が行った1000時間以上の観測で、1987Aの放射性チタン(チタン44)からの高エネルギーX線を検出することに初めて成功した。「これは超新星1987Aでチタン44が作られたことを示す初めての証拠です。過去20年間、超新星残骸を光らせてきたほどの十分な量でした」(ロシア科学アカデミーのSergei Grebenev氏)。
今回の解析結果から、超新星の元となった恒星が崩壊を起こしたとき、太陽質量の0.03%ものチタン44が作られたと推定される。これは理論上予測されている値の上限に近く、チタン44が検出されているもうひとつの超新星残骸「カシオペヤ座A」の2倍に相当する。「カシオペヤ座Aと1987Aほど大量のチタン44は非常に例外的なもので、超新星爆発が非対称な形で起こったと考えられます」(Grebenev氏)。
「インテグラルで得られた今回の成果は、将来の超新星爆発シミュレーションで考慮すべき新しい条件を与えてくれます。重い星の最終段階を含めた進化過程についての理解が、今回のような観測でさらに深まっていくでしょう」(ESAのChris Winkler氏)。