オリオン座大星雲の手前にもう1つの大星団
【2012年11月15日 CFHT】
オリオン座の三ツ星の下に肉眼でも見られる「オリオン座大星雲」は、天文ファンに人気の天体というだけでなく、天文学者にとって星誕生の現場を間近で見られる絶好の研究対象でもある。欧州研究チームの観測により、星雲の手前側に大規模な星団が独立して存在していることがわかった。
オリオン座の三ツ星の下でぼんやりと輝くオリオン座大星雲(M42)は、望遠鏡での天体観測が始まったばかりのころの約400年前、フランスの天文学者ニコラ=クロード・ファブリ・ド・ペーレスクによって初めての記録が残されている。現在では、最も近くにある星形成領域(1500光年かなた)として、様々な星が生まれる過程の研究において重要な観測対象となっている。
この大星雲の手前にも星が分布していることは1960年代から知られていたが、João Alvesさん(ウィーン大学)とHervé Bouyさん(欧州宇宙天文学センター)らがハワイのCFHT(カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡)で観測したところ、予測をはるかに上回る規模の大質量星団が、星雲から独立して存在していることがわかった。これらの星々は、いわゆる「小三ツ星」の1番下のι(イオタ)星、通称ハチサの周囲に群がっている。
研究で新たに判明した重要事項の1つは、研究チームが「イオタ星星団」と名づけたこの星団の星々が、星雲中心部にあるトラペジウム星団よりほんの少しだけ年齢が高いこと。もう1つは、これまで「オリオン星雲星団」とひとくくりにされてきたものが、実はイオタ星星団とトラペジウムの2つの星団から成っていたということだ。「今後はこの領域を調べるために、重なって見える2つの星団をきちんと区別しなければならない」(Bouyさん)という。
「私にとって最も興味深いのは、星雲内で星を生成中の若い星団のすぐそばに、年齢の高いイオタ星星団が存在することです。この観測結果は、星団形成に関するこれまでの仮説モデルと矛盾しており、重要な謎が新たに出てきたことになります。集団で生まれた星から成る星団は、星の誕生の最も典型的な姿を示すとされていますが、なぜそうなっているのかということについてはまだまだわかっていません」(Alvesさん)。