土星の環からふりそそぐ雨
【2013年4月12日 ケック天文台】
土星の環から惑星本体の広い範囲に水が降り注ぐ様子がとらえられた。電荷を帯びた水によって土星大気が中和されるなど、環境に大きな影響をもたらすことが明らかになっている。
1980年代に土星を観測した探査機「ボイジャー」は、土星の環から水が惑星本体に降り注ぐ兆候を見つけた。英レスター大学院生James O'Donoghueさんらの研究で、今回再びその様子が確認された。
土星のプロトン化水素分子(H3+)から放射される近赤外線の分布をケック天文台で観測したところ、環に対応するかのような縞模様が現れた(画像1枚目)。電荷を帯びた水の粒子が磁場の影響で土星上空の電離層に降り注ぎ、そこでプロトン化水素分子を中和させた部分が暗い影として見えているのだろうと推測される。
こうした影の部分は緯度25〜55度の一帯の30〜40%にまで及んでいる。これはボイジャーの観測から考えられていたよりはるかに大規模な範囲で、土星の環が電離層の環境に大きな影響を及ぼしていることが明らかになった。土星には電子密度がとても低い部分が存在することが長年の謎だったが、これで説明できるかもしれない。
探査機「カッシーニ」でもこの模様を今後詳しく調査する予定だという。