タイタンの冬を告げる渦
【2012年7月11日 NASA (1)/(2)】
NASAの探査機「カッシーニ」が土星の環の表面やその中の構造などを久しぶりに観測した。また、衛星タイタンでは、季節の移り変わりを示していると思われる大気の渦が観測されている。
画像1枚目は、土星の衛星タイタンの南極付近に存在する大気の渦をとらえたものだ。6月27日にNASAの探査機「カッシーニ」が撮影した。
2004年にカッシーニが土星に到着したとき、タイタンの北極の上空には雲の極冠が見えていた。北極域は冬だったが、高高度の雲には日が射していたのだ。
その後2009年8月を境に、土星系の北側は春に、南側は冬に向かっている。今回タイタンの南極にとらえられた渦は、来る冬と、それに伴う極冠の兆候と考えられている。
渦の中では、大気が中心に向かって沈み周縁で浮き上がるような対流が起こっていると思われるが、実際に何が起こっているかは未だに謎である。
こうした観測は、カッシーニが今年の春に軌道を変更し、土星の赤道面を離れて飛ぶようになったために可能となったものだ。赤道を離れたことで土星の環も見えるようになり、環の中のプロペラ状構造も2年ぶりに観測された(画像2枚目)。環の中にひそむ非常に小さい衛星の重力によって環の粒子が乱されてできる構造だ。
画像に写っているのはロシア生まれの飛行家にちなんで「シコールスキー」と名付けられた長さ約50kmの構造で、以前から少しずつ広がっている様子が観測されている。こうした同一の構造の動きを追うことで、環と、構造のもととなる衛星との相互作用を詳しく知るための手がかりが得られる。