タイタンの大気は天体衝突から? 実験とシミュレーションで再現

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【2011年5月10日 東京大学

太陽系で地球以外に唯一厚い窒素大気を持ち、地表には液体メタンの湖や川が存在する土星の衛星タイタン。その大気の形成が今から約40億年前に起こった巨大隕石の重爆撃によるものであることを、東京大学を中心とした研究グループが明らかにした。


(シミュレーションによる衝突の再現の画像)

シミュレーションによる衝突の再現。直径20kmの天体を秒速11kmで左上45度の角度で衝突させた後の様子。クリックで拡大(提供:東京大学新領域創成科学研究科)

(探査機カッシーニが観測したタイタンの湖の画像)

探査機カッシーニが観測したタイタンの湖(提供:NASA/JPL)

土星最大の衛星タイタンは、窒素を主成分とする厚い大気で覆われ、地表には液体メタンの海をはじめメタンの循環が存在する。液体メタンが存在するには厚い窒素大気が必要であるが、この大気がどのようにして形成されたのか、未だ明らかにされていない。

従来の説では、タイタンの材料そのものに窒素が含まれていて大気の材料となったとする「材料物質説」と、地球と同じようにタイタンが形成される際の熱や化学反応によって大量に存在したと考えられるアンモニアが窒素に変化したとする「形成時誕生説」があった。

しかし「材料物質説」では窒素以外にも気体成分が一緒に取り込まれるはずであるが、タイタンではそれらが観測されないこと、「形成時誕生説」では窒素大気が形成するほどの熱が発生すると内部が溶けて層状に分化すると考えられるが、観測ではそうなっていないことから、この2つの説にはともに大きな矛盾が存在していた。

今回提唱されたのは、タイタンに天体が衝突した時の熱でアンモニア氷から窒素が発生したのではないかとする「重爆撃期形成説」だ。重爆撃期というのは約40億年前にあったとされる、巨大な隕石衝突が大規模に起こっていた時期を指し、月の衝突クレーターも大部分はこの時期に形成されたと考えられている。

この研究では、まず秒速数kmまで加速した金属をアンモニア氷に衝突させ、そこで発生したガスの分析を行い、窒素の発生を確認した。その結果を数値計算のシミュレーションに組み込んだところ、タイタンで起こったと考えられる天体衝突の回数で現在の量を説明できるほどの窒素が発生することが確かめられた(画像1枚目)。

このモデルでは「材料物質説」のような大気成分の矛盾や、「形成時誕生説」のような内部構造の矛盾は存在せず、カッシーニの観測結果ともよく一致している。また、この実験結果はタイタンだけでなく、海王星の衛星トリトンなど、太陽系の外側にある天体の大気の形成も説明できるとしている。


カッシーニの位置と航路

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、カッシーニやメッセンジャー、「はやぶさ」など、主な探査機15機の設定日時における位置や航路を表示することができます。

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