猫の手星雲などで見つかった特殊な光「円偏光」
【2013年4月23日 国立天文台】
地球生命のアミノ酸分子の偏りをもたらしたという説のある、宇宙の特殊な光「円偏光」。「猫の手星雲」など9つの星形成領域で強く広範囲な円偏光が検出され、その普遍性や傾向が示された。
アミノ酸分子には、「左手」と「右手」のように互いに鏡像関係にある2タイプの組み立て構造のものが存在する。一般的な条件で合成されるアミノ酸はこの2つがほぼ同じ割合で作られるが、地球上の生命を構成するアミノ酸は、なぜかほとんどが左手型だ。
その理由として、地球外起源の「円偏光」(振動の軌跡が円を描く特殊な光)に照らされたことにより、そこで生成されるアミノ酸の鏡像異性体異常が起こったことが推察されている。2010年には、オリオン座大星雲(M42)の星形成領域で広範囲な円偏光が観測された(参照:2010/4/9ニュース「生命をかたちづくったアミノ酸の謎に迫る」)。
今回、総合研究大学院大学・国立天文台の權靜美(クォン・ジョンミ)さんらが、さそり座の方向約5500光年彼方の「猫の手星雲」(NGC 6334、出目金星雲とも)と呼ばれる星・惑星形成領域を観測したところ、これまででもっとも偏光度が高く広範囲に及ぶ赤外線円偏光を検出した。またこれを含む9つの星・惑星形成領域で円偏光が検出された。
これらの観測結果から、円偏光は星・惑星形成領域で普遍的な現象であること、また質量の大きな星が生まれる領域ほど円偏光が大きくかつ広がっているという傾向が示された。
さらに研究では、こうした大規模な円偏光がどのようにして生じるかシミュレーションを行い、中心星の光が周囲の構造で散乱され、星雲内の磁場に沿った向きの塵粒子で減光されて生じた円偏光が観測結果と一致することを突き止めた。