円盤の中で生まれつつある惑星、従来の理論と不一致

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【2013年6月17日 HubbleSite

176光年彼方の小さな星を取り巻く円盤に、惑星誕生の兆候とみられる空隙が観測された。中心星からかなり遠い距離にこの惑星がもし存在するなら、従来の惑星形成理論に矛盾が生じる可能性がある。


うみへび座TW星の原始惑星系円盤

うみへび座TW星の原始惑星系円盤。ハッブル宇宙望遠鏡の観測画像(左)とイラスト図(右)。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, J. Debes (STScI), H. Jang-Condell (University of Wyoming), A. Weinberger (Carnegie Institution of Washington), A. Roberge (Goddard Space Flight Center), G. Schneider (University of Arizona/Steward Observatory), and A. Feild (STScI/AURA))

176光年彼方のうみへび座TW星は、質量が太陽の半分強の赤色矮星だ。生まれてから800万年というとても若い星で、周囲には直径およそ660億kmの塵とガスの円盤が広がっている。

ハッブル宇宙望遠鏡による観測で、TW星からおよそ120億km(太陽〜冥王星のおよそ2倍の距離)離れた円盤中に幅30億kmの空隙があることがわかった。円盤の中で形成された惑星の重力的な影響で作られたもののようだ。

「こんなに軽い恒星からこれほど遠いところに円盤の空隙が見つかったのは初めてです」(発表者で米宇宙望遠鏡科学研究所のJohn Debesさん)。

だがもし本当に惑星が存在するなら、今日もっとも典型的とされる惑星形成理論と矛盾が生じる。理論モデルによれば惑星ができるまでには1000万年以上かかり、中心から離れた場所ならさらに時間が必要となるが、TW星自体が誕生から800万年しか経っていないことと整合性がとれない。

またアルマ望遠鏡の観測によれば、砂粒程度の大きさの塵は恒星から空隙のすぐ内側の88億kmまで広がり、その外からぷっつりと存在しなくなっている。惑星があるのにその外側に砂粒より大きな粒子がないという観測結果も、従来の理論とは相容れないものだ。

もうひとつ考えられている惑星形成プロセスとして、円盤の一部が重力的に不安定となり収縮するというものがある。この場合は数千年あれば惑星ができあがるので時間の矛盾は解消されるが、別の矛盾が生じる。この理論で作られると予測される惑星の質量は地球の数百倍ほどだが、研究チームが空隙の中の様子から惑星の質量を推算したところ、地球の6〜28倍、いわゆる「スーパーアース」から「巨大氷惑星」程度までとみられているのである。

研究チームでは、アルマ望遠鏡や次世代赤外線望遠鏡での詳細な観測でこの謎の解明を進めていきたいとしている。