板垣さん、いるか座に6等級の明るい新星を発見

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【2013年8月15日 VSOLJニュース(302)

山形県の新天体ハンター・板垣公一さんが8月14日、いるか座に明るい新星を発見した。6等級と明るいので、双眼鏡観察や写真撮影に挑戦してみよう。また、13日〜14日夜に撮影した夏の大三角付近の画像に、発見前の新星が写っているかもしれないので要チェックだ。


VSOLJニュースより(302)

著者:前原裕之さん(東京大学木曽観測所)

いるか座の新星

いるか座の新星。クリックで拡大(撮影:板垣公一さん

新星の発見前画像

発見およそ2時間前の新星(赤い印)。クリックで広域拡大(撮影:清田誠一郎さん)

新星の3色測光観測画像

発見後、スペインの望遠鏡を遠隔操作して3色測光観測した画像。クリックで拡大(撮影:遊佐徹さん)

いるか座は夏の天の川のほとりに位置する比較的小さな星座ですが、1967年には3等級まで増光した新星(今日ではHR Delとの変光星名が付けられています)が出現したこともあります。そのいるか座の中に、6等級と双眼鏡でも簡単に見ることができる明るさの新星が発見されました。発見したのはこれまでにも多数の超新星や天の川銀河内の新星を発見されている、山形県の板垣公一(いたがきこういち)さんです。

板垣さんは、8月14.5843日(世界時。日本時間同日午後11時ごろ)に口径18cmの望遠鏡とCCDカメラを用いて撮影した画像から6.8等の新天体を発見し、14.750日には口径60cmの望遠鏡でこの天体を確認しました。前日までに撮影された画像には、この天体は13等以下で写っていないことも報告されました。板垣さんの観測によるこの天体の位置は以下のとおりです。

  赤経  20時23分30.73秒
  赤緯 +20度46分04.1 秒(2000.0年分点)
  いるか座の新星の周辺星図

この天体は、ちょうど夜を迎えたヨーロッパの多数の観測者によってその存在が確認されました。イタリアのG. Masiさんらのグループは、口径35cmの望遠鏡でこの天体の分光観測を行い、この天体が強いHα輝線を示すことを報告しました。また英リヴァプール・ジョン・ムーアズ大学のグループが、カナリア諸島ラ・パルマにある口径2mの望遠鏡で行った分光観測によると、この天体のスペクトルには、はくちょう座P型プロファイルと呼ばれる、青側が吸収線、赤側が輝線となっている形状をした、水素のバルマー線と1階電離した鉄輝線、および弱い中性ヘリウムの輝線が見られることがわかり、この天体が爆発直後の古典新星であることが判明しました。

この天体はドイツのP. Schmeerさんによって双眼鏡を使った眼視観測で6.0等の明るさで見えることが報告されました。まだ爆発直後と思われることから、日本で観測できる時間帯には発見時よりもさらに増光している可能性もあります。6等級と市街地でも小さな双眼鏡でじゅうぶん見える明るい新星ですので、まだ新星を見たことがない人には見るチャンスと言えます。また、デジタルカメラでも固定撮影で容易に写すことができると思われます。今後の明るさや色の変化等に注目してみてください。

編集追記:茨城県の清田誠一郎さんが8月14.50566日、発見前の同天体を7.2等(CCD、Icバンド)で観測している。


撮影画像から発見前の新星を探そう

いるか座の新星発見前夜の13日午後10時半ごろ(日本時間、以下同)の観測では、まだ新星が13等より暗かったことが判明している。この時刻以降に夏の大三角などいるか座付近を撮影した方は、ぜひ星図(本文中からリンク)を参考に画像から探してみよう。増光中の新星が写っているかもしれない。


いるか座の新星の位置

この天体(「いるか座の新星2013(2013)」)を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ステラナビゲータを起動後「ツール」メニューから「データ更新」を行い、新天体データを取得してください。

また、新しいデータや番組をオンラインで入手できる「コンテンツ・ライブラリ」では、新星をわかりやすく×印で表示するための「新星(マークで表示)」ファイルも公開しています。あわせて活用してください。

〈参照〉

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