38億光年彼方の銀河中心に、合体途中のブラックホール連星
【2013年12月4日 NASA】
2つの巨大質量ブラックホールの連星とみられる天体が、38億光年彼方の銀河の中心で見つかった。この連星は、やがて合体してさらに大きなブラックホールになる運命にある。
ほとんどの大きな銀河の中心には、太陽の数十億個分もの質量を持つブラックホールが存在する。ブラックホールがそこまで成長する過程として、周囲のガス物質などを取り込むことや、銀河同士の衝突が考えられる。後者の場合、銀河が合体が進むにつれてそれぞれの中心にあるブラックホールも接近し、互いの周りを回りながら合体してさらに大きな1つのブラックホールとなる。
こうした合体途中のブラックホールは、初めのうちは数千光年ほど離れていて、徐々に数光年にまで距離が縮まる。この接近した段階のブラックホール連星は天体としてのサイズが小さいため、特に発見が困難だ。これまで見つかった数少ないブラックホール連星候補は、すべて天の川銀河から比較的近い場所で発見されている。
今回、赤外線天文衛星「WISE」は、38億光年彼方という異例の遠方にブラックホール連星とみられる天体を発見した。WISEのプロジェクトマネージャーPeter Eisenhardtさんらは「この銀河の特異な性質から、初めは爆発的な勢いで星が生まれているのかと思いました」というが、詳しく調べてみると、そうではなかった。
まずオーストラリア望遠鏡コンパクト干渉計の電波観測で、ブラックホールからのジェットが直線状ではなくジグザグ状に噴射されていることが明らかになった。これはブラックホールが単独ではなく連星であり、その公転によってジェットが新体操のリボンのように揺さぶられていることを示すものだ。
またジェミニ南望遠鏡による可視分光データにも、一方のブラックホールがもう一方のブラックホール周囲の円盤の物質を寄せ集めているような兆候が見られた。これらの傍証から、互いの距離ははっきり特定できないにせよ、ひじょうに接近したブラックホール連星の存在が示された。
今回の成果は、巨大質量ブラックホールが合体によって成長する過程をさらに知る手がかりとして期待される。