ベビーブームが急に終わった都会の銀河
【2013年12月19日 NASA】
豊富なガスを材料に星が次々と生み出された宇宙初期から、現在の銀河のように目立った星形成活動がほとんど見られなくなるまで、いつどのような変化があったのか。米大学の研究から、銀河団に属する銀河の星形成は、90億年前に急激に停滞したという観測成果が発表された。
米ミズーリ大学カンザスシティ校のMark Brodwinさんらは、NASAの赤外線天文衛星「スピッツァー」を用いて、宇宙誕生から43〜60億年経ったころの銀河団を16個観測した。遠方の銀河団のものとしてはかなり大規模な観測例だ。
138億年の宇宙史の中で比較的近代の銀河団を観測した従来の研究から、銀河団に属する銀河は、宇宙初期に一斉に星を生み出したとされてきた。
だが今回の観測から、こうした銀河での星形成は瞬発的というよりも長期的なもので、これまで考えられていたより30億年後の今から90億年前に急に停滞したことがわかった。
「スピッツァー」と異なる波長の赤外線を観測する欧州の衛星「ハーシェル」を使ったStacey Albertsさん(マサチューセッツ大学アマースト校)らの研究でも、同様の結果が出た。宇宙誕生から40億〜100億年までの300個の銀河団を調べたところ、銀河団に属する銀河は、90億年前を境に急に星形成をやめてしまっていた。
なぜ“都会の銀河”は“田舎の銀河”と比べ星形成に急ブレーキがかかってしまったのか。Albertsさんの論文にも名を連ねているBrodswinさんは、以下のようなシナリオで銀河同士の合体が関連しているのかもしれないという。
若く成長途上の銀河が群れをなす銀河団では、衝突合体も頻繁に起こる。2つの銀河の衝突が刺激となって銀河中の低温ガスから星が爆発的に生み出されれば、星の材料が急激に消費される。また銀河の中心にある大質量ブラックホールがガスをどんどん飲み込み、同時に噴出するジェットが周囲のガスを暖め、星形成を妨げるもととなる。
活発な星形成の時代から停滞の時代へ、その移行は驚くほど速やかだったのだ。