アルマ望遠鏡で探る、彗星での有機分子合成
【2014年8月12日 アルマ望遠鏡】
アルマ望遠鏡を用いたアイソン彗星とレモン彗星の電波観測から、彗星を取り巻くコマの中での分子合成について新たなことがわかった。太陽系そのものや生命の素になった有機物の起源を知る手がかりとなる成果だ。
米・カトリック大学の宇宙科学研究者マーティン・コーディナーさんらの国際研究チームは、2013年11月にアルマ望遠鏡で2つの彗星を観測した。1つはレモン彗星(C/2012 F6)、もう1つはこの観測翌日に太陽に最接近し、消滅したアイソン彗星(C/2012 S1)だ。
電波観測で、彗星核を取り巻くガス(コマ)に含まれる3つの有機分子、シアン化水素(HCN)、シアン化水素の原子が組み変わったHNC分子、そしてホルムアルデヒド(CH2O)の分布や運動速度が調べられた。その結果、シアン化水素は彗星核から全方向に均等に噴き出している一方で、HNC分子はかたまりとなってコマの中を移動していることが示された。これは、コマの中で有機物質が集まった塵が壊れることでHNC分子が作られるという説を裏付ける新たな証拠となる。
彗星のコマに含まれる有機物質の塵は地球の大気に飛び込んでも壊れにくく、太古の地球に降り積もって生命の起源になった可能性もある。
中規模の彗星(注)にはあまり多く存在しない有機分子についてこれだけ詳細な観測が行われたのは特筆すべき成果だという。より暗い彗星や遠くの彗星、また、より複雑な未知の分子の観測も今後期待される。
注:「彗星核の大きさ」 大まかに、彗星の核は大きいもので幅数km以上、小さいものは数十m程度。アイソン彗星は数百mの大きさだったと推定されている(参照)。