アルマ望遠鏡が描き出した、老齢の星ミラを取り囲む雲

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アルマ望遠鏡による観測で、くじら座の変光星ミラを取り囲む星雲の姿が明らかになった。連星系の2つの星から噴き出すガスが織り成す複雑な形状は、老いた星の姿がどのように作り出されるのかを調べる手がかりともなる。

【2014年11月28日 アルマ望遠鏡

400光年彼方のミラは、年老いた星であるミラAと、白色矮星(星が一生を終えた後に残された星の芯)とみられるミラBが互いに回りあう連星系だ。太陽から海王星までの距離の2倍ほど離れているが、2つの星は長年にわたり強く影響を及しあっている。

南米チリ・アルマ望遠鏡での観測から、この2つの星を取り巻く美しく複雑な星雲の姿が明らかになった(画像)。中心部分のハート型の空洞構造は、ミラAから穏やかに流れ出たガス(恒星風)の内側でミラBの激しく高速な恒星風が吹くことで形成されたと考えられる。このハート型は過去400年ほどの間にできたものであり、その周囲のガスは2つの星が長い時間をかけてこの奇妙で美しい星雲を作り出してきたことを物語っている。

ミラを取り巻くガス
アルマ望遠鏡が観測した、ミラを取り巻くガスのようす。ガスが動く速度に応じて色付けされている。ミラAとミラBは画像の中央に位置しており、その左下にハート形の空洞が見える(提供:ESO/S. Ramstedt (Uppsala University, Sweden) & W. Vlemmings (Chalmers University of Technology, Sweden) )

今回の観測では、高解像度を実現する12mアンテナ群(米欧が開発)と、大きく広がった構造を余すところなくとらえ精度の高い電波画像を実現するモリタアレイ(日本が開発)とを組み合わせることで初めて、ミラの周囲に大きく広がるガスの構造が鮮やかに描き出された。

これまでさまざまな望遠鏡が明らかにしてきたように、年老いた星や死にゆく星たちの中には奇抜な形をしたものも多くある。しかしこれらの星が太陽のような単独星なのか、あるいはミラのような連星なのか、はっきりわかっていない場合もある。ミラのような星を観察することによって、単独星と連星系とでガスの噴き出し方がどのように異なるのか、天の川銀河全体の環境に及す影響がどのように異なるのかを調べることができる。

11月~12月の宵の空に見えるくじら座
11月~12月の宵の空に見えるくじら座。ミラは約332日の周期で約2等から約10等まで明るさが変わる変光星としても知られる(「ステラナビゲータ」でシミュレーション)