ホットジュピターに成層圏を検出
【2015年6月16日 NASA】
アンドロメダ座の方向約380光年彼方に位置する系外惑星WASP-33bをハッブル宇宙望遠鏡で観測したところ、この惑星の大気に成層圏が検出された。
地球の成層圏は地表から雲の高度あたりまで広がる「対流圏」のさらに上にあり、大気中の分子が太陽からの紫外線や可視光線を吸収して「日よけ」のような役割を果たす場所だ。地表に近いほど気温が高く上空では低い対流圏とは逆に、成層圏では高度が高くなるほど温度も上昇する。この温度逆転現象は、成層圏中のオゾンが太陽からの紫外線を吸収しているために起こる。木星や土星でも、成層圏に含まれる炭化水素によって温度逆転が生じている。
WASP-33bが主星の後ろを通過した際の分光観測から、惑星に摂氏約3000度の成層圏があることや、それより低層の大気の温度が約1500度であることが明らかになった。この惑星では、大気中の一酸化チタンが星からの放射を吸収して大気の温度逆転を引き起こしているようだ。
〈参照〉
- NASA: NASA’s Hubble Telescope Detects ‘Sunscreen’ Layer on Distant Planet
- HubbleSite: Hubble Telescope Detects 'Sunscreen' Layer on Distant Planet
- The Astrophysical Journal: Spectroscopic Evidence for a Temperature Inversion in the Dayside Atmosphere of the Hot Jupiter WASP-33b 論文
〈関連リンク〉
- HubbleSite: http://hubblesite.org/
- The Extrasolar Planets Encyclopaedia: http://exoplanet.eu/
- 星ナビ.com こだわり天文書評:
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