緩やかに死にゆく宇宙

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20万個以上の銀河を紫外線から遠赤外線まで多波長で観測した研究から、現在の宇宙で生み出されているエネルギーは20億年前の半分しかないことが明らかにされた。

【2015年8月12日 ヨーロッパ南天天文台

多波長サーベイ・プロジェクト「GAMA(Galaxy And Mass Assembly)」の一環として行われた研究で、紫外線から遠赤外線まで21種類の波長で銀河が観測された。観測にはヨーロッパ南天天文台(ESO)の可視光線・赤外線望遠鏡「VISTA」やヨーロッパ宇宙機関(ESA)の赤外線天文衛星「ハーシェル」、NASAの赤外線天文衛星「WISE」と紫外線天文衛星「GALEX」などが用いられた。

さまざまな波長で観測された銀河
さまざまな波長で観測された銀河。左から時計回りに、紫外線、可視光線、近赤外線、中赤外線、遠赤外線(提供:ICRAR/GAMA and ESO)

20万個以上の銀河を調べたところ、現在の(近傍の)宇宙で生み出されているエネルギーは、20億年前の宇宙に比べると半分しかないことがわかった。

宇宙の全エネルギーは元々はビッグバンで生成されたもので、その一部が質量という形となっている。質量は恒星内部の核融合反応によってエネルギーに変換され、星が輝く。光や熱として生み出されるエネルギーのほとんどはこの反応によって作られており、銀河中心のブラックホールを取り巻く高温の降着円盤から放射される電磁波や、星からのエネルギーを受けた巨大な塵の雲からの再放射などでも宇宙に広がる。このエネルギーの量が減っている、というのだ。

宇宙がゆっくりと「衰退して」いることは1990年代後半には知られていたが、紫外線から赤外線まで広い波長でエネルギー生成が減っていることを明らかにしたのは今回の研究が初めてだ。