アルマ望遠鏡、ビッグバンから8億年後の初期宇宙で銀河形成を目撃

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アルマ望遠鏡が、これまでに観測された「普通の銀河」のうち最も遠い銀河に、星の材料となるガスの塊を検出した。宇宙初期の普通の銀河が「ただのかすかな点」以上のものとして観測された、初めての例だ。

【2015年8月3日 アルマ望遠鏡

ビッグバンから数億年後に宇宙最初の銀河が形作られ始めたとき、宇宙は水素ガスの霧で満ちていたが、天体が増えていくにつれて光によって霧が一掃され、紫外線が遠くまで届く透明な宇宙へと変貌していった(宇宙の再電離時代)。こうした電離の原因となった最初の銀河についてわかっていることはほとんどなく、今まではただのかすかな「しみ」としてしか撮影できていなかった。

Roberto Maiolinoさん(英・ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所・カブリ宇宙論研究所)率いる研究チームは、星が形作られている途中のガス雲に含まれる電離炭素のかすかな輝きを探してアルマ望遠鏡を用いた観測を行った。普通の銀河こそが宇宙再電離の原因であり、今の宇宙に数多く存在する銀河のもとになったという考えから、クエーサーや星形成銀河ではなく目立たない一般的な銀河に注目していた。

そして、ビッグバンからわずか約8億年の頃の宇宙に存在する銀河「BDF 3299」(みなみのうお座の方向に位置する)に、かすかながら確実な炭素原子からの電波がとらえられた。

銀河BDF 3299(中央)
銀河BDF 3299(中央)。アルマ望遠鏡の観測画像とヨーロッパ南天天文台のVLTによる可視光画像とを合成(提供:ESO/R. Maiolino)

「今回の結果は、いわゆる普通の銀河からの放射としては、ビッグバンから10億年以内という今までで最も遠くで電波を検出した例であり、私たちに最初の銀河が形成される過程を見るチャンスを与えてくれるものです。今回の観測で私たちは、最初の銀河を単なる小さな点ではなく、中に構造をもつ天体として初めて見ることができました」(イタリア・ピサ高等師範学校のAndrea Ferraraさん)。

炭素の放射は銀河の中心ではなく片側から発せられており、中心の雲が破壊されているためではないかと考えられている。炭素の放射は、銀河間空間から降り注ぐ新鮮な冷たいガスの存在を示しており、一方で銀河の中心部では新しい星からの強烈な放射と超新星爆発の影響によって過酷な環境が作られ、ガスの破壊が起こっているのだろう。

さらに、アルマ望遠鏡による観測とコンピュータ・シミュレーションを組み合わせることで、銀河の内部で起こっているプロセスが詳細にわかる。計算による予測と観測結果を比較した結果、BDF 3299は再電離を引き起こした典型的な銀河らしいことが明らかになった。

「私たちは、星間物質や再電離の原因天体について何年も理解しようとしてきました。アルマのデータにより、これまでの予測や仮説を検証することができるようになります。実にエキサイティングであると同時に、新たな疑問も生まれてきます。この種の観測によって、宇宙における最初の星や銀河の形成について私たちが抱いてきた多くの問題を明らかにできるでしょう」(Ferraraさん)。