初期銀河に漂う「炭素のけむり」

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ビッグバンからわずか10億年ほどしか経っていない初期宇宙に存在する銀河の中に、炭素原子のかすかな痕跡が見つかった。アルマ望遠鏡の高感度性能が大きく活かされ、銀河の大きさやガスの運動速度などが明らかにされた。

【2015年7月2日 アルマ望遠鏡

アルマ望遠鏡による電波観測で、遠方の若い銀河から、電離した炭素が放つミリ波がとらえられた。ビッグバンから約10億年後という初期宇宙では、普通の銀河中にも炭素が多く含まれていたことを示唆する結果だ。このシグナルはとても弱くかすかなものだが、非常に高い感度を持つアルマ望遠鏡は、炭素の痕跡をいとも簡単にとらえてみせた。

明るく重い星からの強力な紫外線放射によって電離した炭素は、他の物質と結びつきやすく様々な分子を形作るため、電離した状態で長時間存在することはできない。したがって電離した炭素は星間空間の他の重い元素と比べてずっと少量しか見つからないが、誕生から長時間経過しておらずまだ進化していない比較的若い銀河の、優れた目印とすることができる。その20億年後の銀河では対照的に、電離した炭素はずっと少なくなり、重い元素の塵が満ちている。

COSMOSサーベイの画像内に示した、アルマ望遠鏡で観測された4つの銀河
ハッブル宇宙望遠鏡によって得られたCOSMOSサーベイの画像内に、アルマ望遠鏡で観測された銀河のうち4つを表示したもの(提供:ALMA (NRAO/ESO/NAOJ), P. Capak; B. Saxton (NRAO/AUI/NSF), NASA/ESA Hubble)

若い銀河の炭素の痕跡が見つかっただけでなく、観測データからは銀河の中を移動しているガスも発見された。ガスの速度は若い銀河から数十億年後の宇宙にある、星を作り出している普通の銀河のものと似ており、現在近くの宇宙でもよく見られるものだ。これほど遠い銀河でガスの速度を測定するのは以前は不可能だったが、アルマのおかげで可能となり、宇宙最初の銀河がどのように集まって進化したのかを理解するための新しい扉が開かれたといえる。

「電離した炭素の特定のスペクトルは、銀河の中で水素やヘリウムよりも重い物質がどのように増加してきたかを研究する上で、強力なツールになるかもしれないと長い間考えられてきました。それはまた、初期銀河におけるガスの運動を調べる唯一の方法です。わたしたちの論文は、この方法が確かに使えることを明らかに証明しており、また、こういった研究におけるすばらしい将来を示しています」(米国国立電波天文台のクリス・カロリさん)。

さらに、遠く若いこれらの銀河の質量が太陽の100億から1000億倍もあることもわかった。この質量は天の川銀河に匹敵するもので、初期宇宙に多くある銀河は穏やかで後の時代のものよりも質量が小さいと考えてきた研究者を驚かせる結果となった。

アルマの観測データは、初期宇宙でも「普通の」大きさの銀河を生み出せることを明らかにした。一方で、電離した炭素が豊富にあって塵が目立って少ないことは、それらが進化の過程において非常に未熟な段階にあることを示している。

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