銀河から引きはがされ長くたなびくX線の尾
【2015年11月11日 Phys.Org】
独・ボン大学の研究者がNASAのX線天文衛星「チャンドラ」でヘルクレス座方向の銀河団「Zwicky 8338」を観測したところ、銀河団の中心から100万光年ほどの距離にある銀河団内の銀河「CGCG254-021」のあたりに、約24万8000光年もの長さにわたって伸びるX線で輝く尾が見つかった。
尾を作っているガスが失われたのは(宇宙のタイムスケールで)ごく最近のことのようだ。「銀河から引きはがされたX線の尾としては、これまで見つかった中では最も長いものと思われます」(Gerrit Schellenbergerさん、Thomas Reiprichさん)。
さらに、まるで彗星のように「頭」と「尾」のようなはっきりとした特徴があることや、頭は尾よりも温度が低いこともわかった。
彗星に似た形の銀河で起こったガスの引きはがしには、銀河団の中心に存在する高温プラズマが重要な役割を果たしているようだ。このプラズマと銀河が相互作用することで明るいX線と長い尾が作られていると研究者たちは考えている。銀河から引きはがされたガスの量は非常に多く、ほとんどが銀河から失われただろうとみらている。
〈参照〉
- Phys.Org: Astronomers discover the longest galaxy-scale stripping process ever observed
- Astronomy & Astrophysics journal: The long X-ray tail in Zwicky 8338 論文
〈関連リンク〉
- X線天文衛星「チャンドラ」: http://chandra.harvard.edu/
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