スーパーコンピューター「京」が太陽最古の謎解決に王手

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太陽の活動は11年周期で変動していることが知られているが、そうした変動を作るような大規模な磁場の生成、維持メカニズムはわかっていなかった。「太陽最古の謎」と言われるこの謎をスーパーコンピューター「京」による超高解像度計算で調べ、メカニズム解明に王手をかける成果が発表された。

【2016年3月28日 千葉大学東京大学

太陽の内部(太陽内部の外側30%)は中心で発生したエネルギーによって熱対流で埋め尽くされているが、その熱対流は、地球上では存在しえない非常に高度な乱流状態になっている。この乱流的なプラズマの運動による引き伸ばしによって、黒点数の増減などに見られる約11年の太陽活動周期を駆動する磁場が生成されると考えられている。

しかし、高度にカオス的な運動をする小スケールの乱流の中から秩序立った大規模磁場を生み出す過程は、これまで大きな謎だった。乱流による磁場生成は、カオス的状況が発達するほど小さいスケールが支配的となり、太陽周期を駆動するような大きなスケールの磁場構造が作られなくなっていくのである。

千葉大学大学院理学研究科の堀田英之さんたちの国際チームでは、スーパーコンピュータ「京」を用いて超高解像度の計算を行い、カオス的小スケールの乱流から大規模な磁場を生成するメカニズムを調べた。

(上)計算によって得られた乱流、(下)磁場の様子
(上)計算によって得られた乱流、(下)磁場の様子。非常に小さいスケールの磁場が発達していることがわかる(提供:千葉大学)

ある程度の解像度での計算では、これまでの予測通り、乱流が高度になればなるほど小スケールの磁場が支配的となり、大規模な磁場は作られなくなっていった。

しかし、今回可能になった超高解像度での計算では小スケールの磁場生成が非常に活発になり、小スケールの乱流運動のエネルギーを上回った。その結果、小スケールでの乱流運動が強く制限され、高解像度であるにもかかわらず乱流が高度でなくなった。そして、太陽のような高度に乱流が発達した状況でも、大スケールの磁場が発達することがわかったのである。

このメカニズムはこれまで誰も考えすらしていなかったものだが、実際の太陽でも働くはずと考えられる。太陽活動周期の問題解決のための、基本的で重要な機構を解明した研究結果である。

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