2022年の木星は9月ごろから観察シーズンを迎え、2023年2月ごろまで見やすい状態です。マイナス2.7等級前後ととても明るいのでよく目立ち、街中でも簡単に見つけられます。
木星を双眼鏡で観察すると、木星の周りを巡る衛星がいくつか見えます。日々並び方が変化する様子は見ものです。天体望遠鏡を使うと木星表面の縞模様や大赤斑も観察でき、さらに面白くなります。
目次
木星を見つけよう
夜半の明星
「夜半の明星」とも呼ばれる木星は、とても明るく光る惑星です。建物などに遮られなければ、街明かりがあるようなところでも簡単に見つかります。
今シーズンの木星は、2022年7~8月は「くじら座」にあり、その後は逆行して「うお座」に移ります。9月27日に衝を迎え、11月下旬に順行に転じて2023年2月までうお座を動いた後、再び2週間ほどくじら座を通り、2月下旬にうお座に戻って順行を続けます。見ごろは9~1月ごろでしょう。
木星に関する現象カレンダー
2022年7月~2023年2月ごろに起こる、木星と月との接近などは、以下のとおりです。月との接近は、やや間隔は大きくなりますが前後の日にも見ることができます。
日付 | 現象 | 備考 |
---|---|---|
6月28日 | 西矩(せいく) | 太陽から90度西に離れる(深夜に昇り、日の出のころ南に見える) 黄道座標系では29日 |
7月19日 | 月(月齢20)と並ぶ | 未明~明け方 |
7月29日 | 留(りゅう) | この日を境に、天球上を東→西に動く(逆行する)ようになる |
8月15日 | 月(月齢18)と接近 (›› 解説) | 深夜~翌16日明け方 |
9月11日 | 月(月齢15)と大接近 (›› 解説) | 宵~翌12日明け方 |
9月27日 | 衝(しょう) (›› 解説) | 太陽の反対に来る(日の入りのころ昇り、深夜に南に見え、日の出のころ沈む) |
10月 8日 | 月(月齢13)と接近 (›› 解説) | 夕方~翌9日未明 |
11月 4日 | 月(月齢10)と接近 | 宵~翌5日未明 |
11月 5日 | 月(月齢11)と並ぶ | 夕方~宵 |
11月24日 | 留(りゅう) | この日を境に、天球上を西→東に動く(順行する)ようになる |
12月 2日 | 月(月齢8)と接近 (›› 解説) | 夕方~翌3日未明 |
12月22日 | 東矩(とうく) | 太陽から90度東に離れる(日の入りのころ南に見え、深夜に沈む) |
12月29日 | 月(月齢6)と接近 (›› 解説) | 夕方~深夜 |
1月26日 | 細い月(月齢4/5)と接近 (›› 解説) | 夕方~宵 |
2月23日 | 細い月(月齢3)と並ぶ | 夕方~宵 南米で木星食(日本時間8時ごろ) |
2月下旬 ~3月上旬 |
金星と大接近 (›› 解説) | 夕方~宵 最接近3月2日ごろ |
3月23日 | 細い月(月齢2)と並ぶ | 夕方 南太平洋~南米で木星食(日本時間6時ごろ) |
3月下旬 | 水星と大接近 (›› 解説) | 夕方 最接近28日ごろ |
4月12日 | 合 | 太陽と同じ方向に来る(見えない) |
木星は2023年3月下旬以降、太陽に近づいて見えにくくなり、4月中旬に合(太陽と同じ方向になること)を迎えて見えなくなります。明け方の東の空に見えるようになるのは5月中旬ごろからです。
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火星、土星も見よう
ガリレオ衛星や縞模様を観察しよう
ガリレオ衛星
木星には80個の衛星が見つかっています。そのうちイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストは大型の衛星で、双眼鏡や小型望遠鏡でも存在がわかります。1610年にガリレオが発見したことから、この4つはとくにガリレオ衛星とも呼ばれています。
ガリレオ衛星のうち、一番木星に近いイオはわずか2日弱で木星の周りを一回りします。一番外側のカリストも一回りするには約17日ほどしかかかりません。このため、ガリレオ衛星の位置は目まぐるしく変化します。木星の裏に回ったり木星の影に入ったりして、見えなくなっていることもあります。
衛星の動きをシミュレーション動画にしたので、観察の際の参考にしてください(I:イオ/II:エウロパ/III:ガニメデ/IV:カリスト)。図は上が北になっています。天体望遠鏡では像が回転していることが多いので見比べるときには注意しましょう。
縞模様と大赤斑
天体望遠鏡で木星を見ると、縞模様があるのがわかります。口径5cm程度の小型望遠鏡でも、目立つ2本を確認できるでしょう。
口径が大きくなると、さらに多くの縞模様が見えてきます。気流が安定しているとき(風がないとき)や木星が南の空に見えるとき(昇った直後や沈む直前ではないタイミング)のほうが条件良く見えるでしょう。
さらに、大赤斑という模様も見えるかもしれません。大赤斑は直径が地球数個分もある、巨大な台風のようなものです。木星は約10時間で自転しているので、大赤斑が裏にまわっていることもあります。シミュレーション動画やステラナビゲータを参考にして、タイミングを見計らって観察するようにしましょう。
公開天文台や科学館などで開催される観望会(観察会、観測会)では、大きい望遠鏡で木星を見ることができます。お近くのイベント情報は、全国プラネタリウム&公開天文台情報ページ「パオナビ」で検索してみてください。
※新型コロナウイルス感染症対策として、事前申し込みや人数制限などの可能性があります。詳しくは施設やイベント主催者などにご確認のうえ、安全に注意してご参加ください。
木星を撮影してみよう
カラーCMOSカメラを天体望遠鏡に接続して惑星を動画撮影し、その中から写りの良いフレームだけを選んで多数枚コンポジットすると、精緻で滑らかな惑星像を得ることができます。天体画像処理ソフトウェア「ステライメージ」を使うと、動画からのコンポジットはもちろん、カラーバランス調整やディテール強調まで簡単かつ詳細に行えます。画像を「作品」に仕上げてみましょう。
オンラインショップ
アストロアーツのオンラインショップでは、天体望遠鏡や双眼鏡を多数取り扱っています。縞模様や衛星の動きを、自分の目で観察してみましょう。ライトやクッションなどの便利グッズ、太陽系のことが詳しくわかる書籍などもあります。
木星に関するマメ知識
太陽系最大の惑星
木星は大きさ(赤道部分の直径)が地球の約11倍、質量が地球の約320倍ある、太陽系の惑星の中で最大の天体です。主成分は水素やヘリウムといった気体で、巨大ガス惑星に分類されます。また、約10時間で自転しており、これは太陽系の惑星の中で最速です。
表面の模様
特徴的な表面の模様は、木星の雲を見ているものです。雲は主にアンモニアやその化合物でできていますが、少量の他の物質が太陽光と反応することでオレンジ色に見えます。明るい部分(帯)は上昇気流の部分、暗い部分(縞)は下降気流の部分で、その中に見える大赤斑や白斑は木星の嵐です。まれに、木星に小天体が衝突した際の閃光や、天体衝突後の痕跡の模様が、地上や宇宙望遠鏡で観測されることもあります。
また、非常に強い磁場を持っているため、北極や南極の周辺でオーロラが発生することもあります。
12年で1周
木星の公転周期は約12年で、地球からはおよそ1年ごとに黄道12星座(いわゆる「星占いの星座」)を1つずつ移っていくように見えます。干支の12年で天球上を一巡することから、中国では「歳星(さいせい)」とも呼ばれます。
木星の軌道はわずかにつぶれた楕円形なので、地球と最接近するときの距離は毎回変わります(満月の大小や、火星の大接近・小接近と同じことです)。今シーズンは12年のうちで最も近づくタイミングで、とくに今回(9月26日、約5.91億km)は21世紀中で一番近付きます(*1)。最接近のうちでも距離が大きい2029年4月13日(約6.66億km)と比べると、約7400万km近い距離です(*2)。火星の大接近・小接近ほど大きく見え方が変わるわけではありませんが(*3)、12年のうちで最大の木星であることを、少し意識してみると面白いかもしれません。
*1:21世紀中で2番目に近いのは12年後の2034年10月1日で、今回より約7万km遠い。
*2:21世紀中で最遠の最接近は2076年3月30日(約6.67億km)。
*3:直径比で約13%変わる(火星は75%以上変わる)。
木星探査
1970年代に「パイオニア計画」や「ボイジャー計画」によって探査機が木星に接近し、表面の詳細な観測や環の発見、新たな衛星の発見などの成果を挙げました。
1989年に打ち上げられた探査機「ガリレオ」は、史上初めて木星を周回しながら観測を行いました。ガリレオは1995年から2003年にかけて木星やその衛星を観測し、数々の美しい画像や科学データをもたらしました。
土星探査機「カッシーニ」や冥王星・太陽系外縁天体探査機「ニューホライズンズ」も、それぞれのメインターゲットへと向かう途中に木星を観測しています。
2011年8月に打ち上げられ2016年7月に木星に到着した探査機「ジュノー」は、木星の北極と南極を通る楕円軌道を周回しながら、木星の大気や磁場、内部の様子などを調べています。
また、ハッブル宇宙望遠鏡によってエウロパに間欠泉らしいものがとらえられたり、日本の科学衛星「ひさき」が木星磁気圏の観測を行ったりするなど、地上の天体望遠鏡や地球周回の衛星からの観測も活発に行われています。ヨーロッパ宇宙機関が主導し日本なども参加する「JUICE」計画では、2023年に探査機を打ち上げ、ガニメデの周回探査などを実施する予定です。NASAも2024年に探査機「エウロパ・クリッパー」を打ち上げ予定です。