ビッグバンから7億年後、観測史上最遠の銀河群
【2020年1月14日 ケック天文台】
米・アリゾナ大学のVithal Tilviさんたちの研究チームは「Cosmic Deep And Wide Narrowband(Cosmic DAWN)」と呼ばれるサーベイ観測の一環で、うしかい座方向の小さな領域を撮像した。
さらに研究チームは米・ハワイのケックI望遠鏡で分光観測を行い、この領域に存在する3つの銀河からなるグループ「EGS77」がビッグバンから6億8000万後の宇宙に存在していることを明らかにした。単独の銀河ではこれより遠い(初期宇宙に存在する)ものも発見されているが、銀河群としてはEGS77は観測史上最も遠い天体となる。
この発見は、EGS77の銀河が「宇宙の再電離」を引き起こした天体であることを示すものである。宇宙の再電離とは「宇宙の夜明け」とも呼ばれ、宇宙で最初期に誕生した星や銀河からの紫外線によって、当時の宇宙を満たしていた中性水素ガスが電離される現象のことだ。「銀河からの強い光が周囲の水素ガスを電離させ、電離水素ガスの泡が形成されると、星からの紫外線が自由に飛び回れるようになります。EGS77も大きな泡を形成し、銀河からの光はほとんど衰えることなく地球へ届きます。このような泡が個々の銀河の周囲に広がり、至るところに光が届くようになったのです」(Tilviさん)。
「EGS77は宇宙の再電離を引き起こしたことが特定された初の銀河群です。将来の観測でより詳しいことがわかり、EGS77に属する他の銀河が見つかるかもしれません」(NASAゴダード宇宙飛行センター Sangeeta Malhotraさん)。
〈参照〉
- W. M. Keck Observatory:Astronomers Spot Distant Galaxy Group Driving Ancient Cosmic Makeover
- The Astrophysical Journal Letters:Onset of Cosmic Reionization: Evidence of an Ionized Bubble Merely 680 Myr after the Big Bang 論文
〈関連リンク〉
関連記事
- 2022/08/30 宇宙再電離は銀河が多い領域ほど早く進行
- 2020/10/14 銀河の歴史を語る、周縁部の惑星状星雲たち
- 2020/06/11 ハッブル宇宙望遠鏡でも見えない、宇宙第一世代の恒星
- 2019/05/31 宇宙最初の星の超新星爆発は球形ではなかった?
- 2018/08/20 初期宇宙は銀河が少ない場所ほど不透明
- 2018/03/06 宇宙最初の星々が宇宙背景放射に残した痕跡を初検出
- 2017/12/13 ダークマターの大海原に浮かぶ巨大原始銀河
- 2017/12/11 観測史上最も遠い超大質量ブラックホールを発見
- 2017/07/18 8億歳の宇宙のライマンアルファ銀河から探る宇宙再電離
- 2015/06/11 銀河の歴史を物語る、銀河周囲に空いた3組の巨大な空洞
- 2014/06/09 小さな銀河群同士の衝突で分離したダークマター
- 2014/04/24 宇宙誕生10億年後のガンマ線バーストに中性水素の痕跡
- 2012/09/21 宇宙が5億歳だったころの銀河の光
- 2012/03/14 輝く銀河の時計盤
- 2011/04/15 重力レンズで127億光年先の銀河もくっきりと
- 2010/09/24 131億光年かなたの銀河に「星の元祖」が存在か 宇宙史完成は間近
- 2009/02/10 すばる望遠鏡、宇宙暗黒時代の終わりに迫る
- 2008/11/28 すばる望遠鏡に新しい観測の眼
- 2008/10/31 宇宙の環境問題:銀河群に交われば赤くなる
- 2006/09/14 すばる望遠鏡、過去最遠の銀河を発見