8億歳の宇宙のライマンアルファ銀河から探る宇宙再電離
【2017年7月18日 NOAO】
ビッグバンから約30万年後の宇宙は暗く、星も銀河も存在しない宇宙は中性の水素ガスで満たされていた。ある時に最初の銀河が現れ、その強い紫外線によって周囲の銀河間ガスが電離され闇が照らし出されて、宇宙の暗黒時代が終わったと考えられている。
この劇的な変化はビッグバンの約3億~10億年後の間に起こったことが知られているが、最初の銀河がいつ形成されたのかを決定するのは非常に困難である。これらの銀河から放射された紫外線は中性の銀河間ガスに強く吸収や散乱されてしまい、検出が難しいためだ。
中・上海天文台のZhenya Zhengさんたちの研究チームはチリのブランコ4m望遠鏡に設置されたダークエネルギーカメラ「DECam」を使って、「Lyman-Alpha Galaxies in the Epoch of Reionization:LAGER(電離時代のライマンアルファ銀河)」と名付けたサーベイ観測を実施した。水素のライマンアルファ線で光る小さな星形成銀河が中性水素ガスに取り囲まれていると銀河は見づらいが、ガスが電離すれば銀河が検出しやすくなるので、こうしたライマンアルファ銀河の人口調査を行うことで銀河間ガスが電離された時代、ひいては宇宙初代の銀河がいつ形成されたのかを推測することができる。
観測の結果、ビッグバンから8億年後の宇宙に存在していたライマンアルファ銀河の候補23個が発見された。一度にこれほどの多くのライマンアルファ銀河が発見されたのは初めてのことだ。これまで同時代に検出されていたライマンアルファ銀河の数は20個ほどだったので、今回の結果により一気に数が倍ほどに増えたことになる。
一方でこの数は、ビッグバンから10億年後の宇宙に比べると4分の1でしかない。この結果は、宇宙の電離プロセスはもっと早い時期に始まり、ビッグバンから8億年後の時点では銀河間ガスの半分が中性で半分が電離しているという状態で電離プロセスがまだ完了していなかったことを示唆している。「ビッグバンから8億年後の時点ですでに銀河間ガスの50%が電離していたことを発見しました。銀河間の中性水素ガスを電離させ宇宙を照らし出した初代銀河の大部分が、それ以前の時代に形成されたことを示すものです」(中国科学技術大学 Junxian Wangさん)。
〈参照〉
- NOAO News:Distant Galaxies ‘Lift the Veil’ on the End of the Cosmic Dark Ages
- The Astrophysical Journal Letters:First Results from the Lyman Alpha Galaxies in the Epoch of Reionization (LAGER) Survey: Cosmological Reionization at z~7 論文
〈関連リンク〉
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