連星系で作られた美しいガスの広がり
【2020年2月10日 アルマ望遠鏡】
太陽のような質量が小さい星は、恒星の中心部にある水素を核融合反応で燃やし尽くして一生の終わりに近づくと、大きく膨らんで赤色巨星と呼ばれる段階へと進化する。その後、赤色巨星の外層部分のガスは宇宙空間へと流れ出し、ガスや塵からなるシェル構造が形成され、中心部に白色矮星と呼ばれる高温高密度の天体が残される。中心の白色矮星からの紫外線によって照らされたガスは惑星状星雲として観測される。
恒星が単独で存在するのではなく連星系を構成している場合、その一生の終末期の様子は異なるものとなる。スウェーデン・チャルマース工科大学のHans Olofssonさんたちの研究チームは、アルマ望遠鏡とヨーロッパ南天天文台の電波望遠鏡「APEX(Atacama Pathfinder EXperiment)」を用いてケンタウルス座の方向にある連星系HD 101584を観測し、赤色巨星を含む連星の進化の様子を調べた。
HD 101584では質量の大きい主星が先に赤色巨星へと進化し、質量の小さい伴星を取り込むほど大きく膨んだ。その結果、伴星はらせん軌道を描きながら主星のほうへと落下していく。現在のところ、主星と伴星は衝突するには至っていないが、伴星の動きが引き金となって、主星は短時間のうちに大量のガスを宇宙空間に放出し、星の芯が外から見えるようになった。単独の赤色巨星が白色矮星になるのに比べると、ずっと早く進化の最終段階に到達してしまったのだ。
この伴星の動きによって赤色巨星のガスがかき乱され吹き飛ばされたことにより、連星の周りに広がる複雑で美しい模様が生み出されたのである。加えて、中心の星から左右方向に細く噴き出したガスも模様作りに一役買っていることも明らかにされた。
「太陽のような星が一生を終える様子は、一般論として大まかなシナリオを説明することはできますが、そこで起こることの具体的な理由やその過程を詳しく理解することはできていませんでした。今回観測したHD 101584は、赤色巨星と惑星状星雲というよく研究された2つの進化段階のちょうど中間に位置していて、進化の過程を解き明かすための重要なヒントを与えてくれます。HD 101584の構造を詳しく写し出すことで、元の巨星と惑星状星雲の間をつなぐことができるのです」(スウェーデン・ウプサラ大学 Sofia Ramstedtさん)。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡:アルマ望遠鏡がとらえた、連星系を成す星の最期
- ESO:ALMA catches beautiful outcome of stellar fight
- Astronomy & Astrophysics:HD 101584: circumstellar characteristics and evolutionary status 論文
〈関連リンク〉
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