JWSTがとらえたリング星雲
【2023年8月7日 ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン/マンチェスター大学】
英・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMichael Barlowさんを中心とする研究チームが、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の近赤外線カメラ「NIRCam」で撮影したこと座のリング星雲(M57、環状星雲)の高解像度画像を公開した。
リング星雲は地球から約2600光年の距離にある有名な惑星状星雲で、アマチュアの小口径望遠鏡でもドーナツ状の姿を楽しむことができる。その正体は、一生の最期を迎えつつある恒星が質量の大部分を宇宙空間に放出した姿だ。
Barlowさんたちは2022年8月4日にNIRCamでリング星雲を撮影した。発表された画像は、水素分子(H2)が出す波長0.212μmの輝線を青、水の氷などの塵が出す0.3μm付近の輝線を緑、多環芳香族炭化水素(PAH)やメタン分子が出す0.33μm付近の輝線を赤に割り当てて合成した擬似カラー画像になっている。今回得られた高解像度の画像では、リング星雲の膨張するシェルが持つ複雑な構造や中心星周辺の様子をはっきりととらえている。
「私たちは恒星の一生の最終章を目にしています。これはいわば、太陽の遠い未来をかいま見ているようなものです。JWSTの観測によって、こうした荘厳な宇宙のイベントを理解するための新たな窓が開かれました。私たちはリング星雲を、惑星状星雲がどのように作られ、進化していくかを研究する実験室として利用できます」(Barlowさん)。
BarlowさんたちはJWSTの中間赤外線観測装置「MIRI」でもリング星雲の撮像・分光観測を行っており、今年の後半にはMIRIによる画像も公開できる見込みだという。
〈参照〉
- University College London:James Webb Space Telescope captures stunning images of the Ring Nebula
- The University of Manchester:Manchester astronomer captures stunning images of the Ring Nebula on James Webb Space Telescope
- Cardiff University:Astronomers spy structures that “no previous telescope could detect” in new images of dying star
- STScI:Program Information: GO 1558 観測プロポーザル詳細
〈関連リンク〉
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